私がそう言うと、先輩はニッと笑った。

「いつ気づいた?」

「さっきです。だって、明らかおかしいじゃないですか」

体育館に向かう道はあの道の一つだけ。
つまり、一度体育館に向かったら、図書室に戻るときは必ず私とすれ違うはずだ。
なのに、かぼちゃ君は私とすれ違わずに、図書室の前にいた。

瞬間移動じゃないとしたら、答えは単純。

かぼちゃ君は一人ではないのだ。


「かぼちゃ君は3人、ですよね。先輩と、実妃ちゃんと、瓜先。ですよね、先輩」

「……なんで気づいた?」

「さっき、合唱部の部員だと思われる子たちの会話をきいたんです。そしたら、昨日八坂先輩がここに来ることは部員には知らされてなかったらしいんですよ。普通、卒業生が学校にきたとき、自分が所属していた部活に顔を見せるのが多数でしょう? なのに、先輩が来たのは合唱部がお休みの昨日なんです」

私はゆっくりと図書室のカウンターの方へと歩く。

「八坂先輩が来た理由、それは今さっきまで実妃ちゃんがここに来た理由と同じ。ある人に呼ばれてきたんです」

そう、部活がないと知らずにくる理由として考えられること。

八坂先輩はある人に、昨日きてくれるよう呼ばれたのだ。
そしてそれを知ってたのは、私の知る限り一人だけ。


「でしょ? 良子」


この嘘つき少女、狩野良子だ。