家に帰って夕食を胃に入れ、お風呂で暖まっても寝付くことが出来なかった。
深月の過去を聞いてしまったからだった。
思えば、私や椎菜のような親友の前でも、泣くところは1度も見たことがない。
いつも、私たち親友を海のようなおおらかさで包んでくれる子。
私の中で、彼女はそんな印象なのだ。
ふと思い出す。
彼女が亡くしたという少女。
花藤 明日翔。
その苗字には、聞き覚えがあった。
思い出そうとすると、頭痛と嘔気が襲った。
何とかそれらに耐えながら、中学校の頃の卒業アルバムを引っ張り出す。
中学1年生のクラスの集合写真の右上に、合成させて貼り付けてある。
クラス別のページを見ても、取ってつけたように、は行の名前が最後にあった。
その時、家のパソコンがメールを受信した。
アドレスは麗眞くんだ。
PDFが添付されていた。
偶然今日出会った秋山くんがひょんなことから出した名前が気になっていた。
だから、麗眞くんに頼んで、彼女について調べてもらっていた。
私の親友内では「宝月興信所」なんて呼ばれ方をされている。
文面にはこう記載されていた。
『調べてもらうように依頼してもらっていた情報をお送りいたします。
返信不要、お礼も不要ですので、お気になさらず』
この丁寧な文面。
宛先こそ麗眞くんになっているが、書いたのは彼の執事の相沢さんだろう。
花藤 明日翔の情報にさっそく目を通した。
兄弟姉妹の欄に、妹がいたと書かれている。
過去形で書かれているのも引っかかった。
「妹は花藤萌香。
姉とは1学年下。
通っていた学校は姉とは違う。
過呼吸を起こした際、たまたま、母が看護師をしているという生徒に助けられる。
その、自分を助けてくれた生徒をいじめるのはやめて欲しい、ターゲットなら自分がなると、いじめの主犯だった生徒に啖呵を切る。
そして、自らいじめのターゲットとなって、エスカレートしたいじめに耐えられず、自室で首を吊って命を絶つ。
自室には遺書が残されていた。
それには、過呼吸に陥ったときに助けてくれた少女、岩崎 理名への感謝と、手際の良さを賞賛する言葉が書き連ねられていたという。
……!
後ろから鈍器で思い切り、頭を殴られたような頭痛がした。
忘れられるわけがなかった。
すぐに思い出せなかったのが、不思議なくらいだ。
彼女こそ、私が中学2年生のとき、体力テストのシャトルラン終わりに過呼吸を起こした女子生徒だ。
先生に頼ると間違った処置をされる。
間違った処置によって死に至るものではない。
しかし、間違った処置をされた医師や看護師側のリカバリーが面倒だ。
そこからの行動は早かった。
体育教師の携帯を奪って、暗記していた母の勤める病院の番号を押した。
そして、偶然に電話口に出た、母に過呼吸の対処法について指示を仰いだのだった。
迅速な対応のおかげで、回復は早かった、とだけは聞いていた。
その日以来、それまでが嘘だったかのように、私へのいじめはピタリと止んだ。
だから、保健室登校は続けて、授業に出なかった分を補いながら、少しずつ教室にも顔を出せた。
私がのうのうと教室に来ていた裏で、そんなことが行われていたなんて、知らなかった。
これが事実なら、この姉妹の母親は、大事な娘を短期間のうちに、2人も亡くしたことになるのだ。
しかも、自殺という最悪の形で。
このことは、深月には告げない方が良いだろうと思った。
私は、高校1年生の夏休みに初めて、親友に秘密を作ったのだった。
深月の過去を聞いてしまったからだった。
思えば、私や椎菜のような親友の前でも、泣くところは1度も見たことがない。
いつも、私たち親友を海のようなおおらかさで包んでくれる子。
私の中で、彼女はそんな印象なのだ。
ふと思い出す。
彼女が亡くしたという少女。
花藤 明日翔。
その苗字には、聞き覚えがあった。
思い出そうとすると、頭痛と嘔気が襲った。
何とかそれらに耐えながら、中学校の頃の卒業アルバムを引っ張り出す。
中学1年生のクラスの集合写真の右上に、合成させて貼り付けてある。
クラス別のページを見ても、取ってつけたように、は行の名前が最後にあった。
その時、家のパソコンがメールを受信した。
アドレスは麗眞くんだ。
PDFが添付されていた。
偶然今日出会った秋山くんがひょんなことから出した名前が気になっていた。
だから、麗眞くんに頼んで、彼女について調べてもらっていた。
私の親友内では「宝月興信所」なんて呼ばれ方をされている。
文面にはこう記載されていた。
『調べてもらうように依頼してもらっていた情報をお送りいたします。
返信不要、お礼も不要ですので、お気になさらず』
この丁寧な文面。
宛先こそ麗眞くんになっているが、書いたのは彼の執事の相沢さんだろう。
花藤 明日翔の情報にさっそく目を通した。
兄弟姉妹の欄に、妹がいたと書かれている。
過去形で書かれているのも引っかかった。
「妹は花藤萌香。
姉とは1学年下。
通っていた学校は姉とは違う。
過呼吸を起こした際、たまたま、母が看護師をしているという生徒に助けられる。
その、自分を助けてくれた生徒をいじめるのはやめて欲しい、ターゲットなら自分がなると、いじめの主犯だった生徒に啖呵を切る。
そして、自らいじめのターゲットとなって、エスカレートしたいじめに耐えられず、自室で首を吊って命を絶つ。
自室には遺書が残されていた。
それには、過呼吸に陥ったときに助けてくれた少女、岩崎 理名への感謝と、手際の良さを賞賛する言葉が書き連ねられていたという。
……!
後ろから鈍器で思い切り、頭を殴られたような頭痛がした。
忘れられるわけがなかった。
すぐに思い出せなかったのが、不思議なくらいだ。
彼女こそ、私が中学2年生のとき、体力テストのシャトルラン終わりに過呼吸を起こした女子生徒だ。
先生に頼ると間違った処置をされる。
間違った処置によって死に至るものではない。
しかし、間違った処置をされた医師や看護師側のリカバリーが面倒だ。
そこからの行動は早かった。
体育教師の携帯を奪って、暗記していた母の勤める病院の番号を押した。
そして、偶然に電話口に出た、母に過呼吸の対処法について指示を仰いだのだった。
迅速な対応のおかげで、回復は早かった、とだけは聞いていた。
その日以来、それまでが嘘だったかのように、私へのいじめはピタリと止んだ。
だから、保健室登校は続けて、授業に出なかった分を補いながら、少しずつ教室にも顔を出せた。
私がのうのうと教室に来ていた裏で、そんなことが行われていたなんて、知らなかった。
これが事実なら、この姉妹の母親は、大事な娘を短期間のうちに、2人も亡くしたことになるのだ。
しかも、自殺という最悪の形で。
このことは、深月には告げない方が良いだろうと思った。
私は、高校1年生の夏休みに初めて、親友に秘密を作ったのだった。



