椎菜ちゃんを探して、部屋に戻ってみた。
オートロックのドアをカードキーで開けてみたが、室内にはいなかった。
「私たちの部屋にもいなかったよー?」
華恋ちゃんと美冬ちゃんが、私のところまでそう言いながら歩いてきた。
その時、私の携帯電話が着信を告げた。
今は電話どころじゃないと、舌打ちをしながら画面を見る。
着信は、麗眞くんからだった。
舌打ちなんてしてしまった。
後で謝ろう。
『理名ちゃん?
麗眞だけど。
今、フロントの人に聞いたんだけど、椎菜らしい女の子が外出てったのを見たって人がいるから、外行くんだ。
人数多いほうがいいし2人くらい女の子連れて来て?』
「わかった。
私なんかより今女子力高い女の子二人と一緒にいるから行く!!」
私がそう告げると、電話は切れた。
「椎菜ちゃんの暫定彼氏からの情報。
ロビーの受付の人が、椎菜ちゃんが外に出ていくのを見たって人がいるから、2人も一緒に来てくれる?」
強く首を縦に振って、2人は私の後ろをついてきた。
「椎菜ちゃんは、今の華恋ちゃんと似たような服装をしてる。
さっき、セミナールームに行く時も、羽織りものの類いは持ってなかった。
いくら春先でも、夜は風邪が出てきて寒い。
さらに言うと、ここは山だし。
あまり遠くには行けないはず」
「さすが理名ちゃん、そういうところ、よく気がつくし見てるね」
「そういうのも、ちゃんと女子力だよ」
そう言われて、照れながらエレベーターから降りた。
けれど、すぐに真顔に戻る。
彼女を探した後でも、照れることなんていくらでも出来るのだ。
ロビーに着くと、デニム地のブルゾンを持った麗眞くんがいた。
「ごめん、お待たせ」
「そんな待ってないから、大丈夫。
さぁ、探すか。
ったく。
いつもこうなんだよな、椎菜」
そう言って、麗眞くんは外に出て行った。
私たちも、それを追うようにして外に出て、各々散らばる。
「あ!」
「美冬ちゃん、華恋ちゃん!」
彼女たちと、電話番号を交換した。
「引き止めてごめん、2人との連絡手段が欲しかったの」
私のその言葉に、二人は親指を立てた。
何の合図かはこの際考えない。
まずは、彼女を探すことが先決だ。
「椎菜ちゃん?
どこー?」
時々、彼女の名前を呼びながら、ホテルの周りの草むらや電柱の裏まで探す。
駐車場のそばの太い樫の木の傍に、ぼんやり人影があった。
そっと覗いてみると、その人影は淡い花柄のマキシワンピースを着ていた。
「椎菜ちゃん?
皆心配してるよ?
早くホテル戻ろう。
そんな薄着で、風邪引くし」
「理名ちゃん?理名ちゃんだよね?
そこにいるの。
声でわかるよ。
何よ!
理名ちゃん、ただの1度だって、本気で人を好きになったことないんでしょ?
そんな人に、私の気持ちなんて分かんない!
好きな人が、他の女の子と二人きりで話しるの見ると、その女の子にジェラシー感じるの。
しかも、好きな男の人の腕の中にいるのが、自分じゃない別の人だなんて。
……信じられないし許せないって!
そう、思っちゃうの。
そんな気持ち、理名ちゃんは一度だって味わったことないでしょ!」
「……」
私は、椎菜ちゃんの言葉に何も言い返せずに押し黙った。
彼女の言う通り、そんな恋愛なんてただの一度も経験がないからだ。
私が無言で立ちすくんでいると、人影がゆっくり崩れ落ちるのがわかった。
「椎菜ちゃん!?」
うずくまるように膝を抱えている彼女の肩に少し触れただけでも分かるくらい、身体が熱を持っていた。
何分だとか、正確な時間なんて本人にしかわからない。
けれども冷たい風に晒されながら湯上りの身体で屋外にいたのだ。
風邪を引くのもうなずけた。
医師志望とはいえ、ここには何の道具もないのだ。
どうすることも出来ない。
そんな知識も到底持ち合わせていない。
肩を支えた格好のままフリーズしていると、肩に私の手ごと、デニム地のノーカラーブルゾンが着せかけられた。
その主は、麗眞くんだった。
「麗眞くん!?」
その後ろから、彼の執事、相沢さんがついてきていた。
「完全なる発熱のようですね。
リムジンに乗せて、ホテルまでお運びしましょう。
理名様もどうぞ、お乗り下さい」
リムジンに乗り込んだ後、美冬ちゃんに連絡をとる。
連絡手段は、電話番号でやり取りができる、ショートメッセージサービスだ。
”椎菜ちゃん確保した。
ホテル前で待っててほしい。”
返事は数秒で携帯電話に届いた。
はやすぎないか?
”麗眞くんの執事さんの車乗ってる感じ?
待ってるからねー”
これは美冬ちゃんからだ。
”美冬から聞いたー!!
見つかったんだって?
お疲れ様ー!
椎菜ちゃん、体調崩してるとかない?”
これは華恋ちゃんからだ。
”熱あるっぽい”
私が送信すると、すぐに返事がきた。
驚きの顔文字だけを送ってきたのは華恋ちゃんだ。
”ホテルのロビーに私たちの班員と理名ちゃんたちの班員と、担任の先生がいるみたいだから、そう伝えておく”
美冬ちゃんのメッセージを見た後、外の景色を見る。
もう私たちが泊まるホテルの前にいた。
ホテルに着いたらしい。
やっぱり早すぎる。
オートロックのドアをカードキーで開けてみたが、室内にはいなかった。
「私たちの部屋にもいなかったよー?」
華恋ちゃんと美冬ちゃんが、私のところまでそう言いながら歩いてきた。
その時、私の携帯電話が着信を告げた。
今は電話どころじゃないと、舌打ちをしながら画面を見る。
着信は、麗眞くんからだった。
舌打ちなんてしてしまった。
後で謝ろう。
『理名ちゃん?
麗眞だけど。
今、フロントの人に聞いたんだけど、椎菜らしい女の子が外出てったのを見たって人がいるから、外行くんだ。
人数多いほうがいいし2人くらい女の子連れて来て?』
「わかった。
私なんかより今女子力高い女の子二人と一緒にいるから行く!!」
私がそう告げると、電話は切れた。
「椎菜ちゃんの暫定彼氏からの情報。
ロビーの受付の人が、椎菜ちゃんが外に出ていくのを見たって人がいるから、2人も一緒に来てくれる?」
強く首を縦に振って、2人は私の後ろをついてきた。
「椎菜ちゃんは、今の華恋ちゃんと似たような服装をしてる。
さっき、セミナールームに行く時も、羽織りものの類いは持ってなかった。
いくら春先でも、夜は風邪が出てきて寒い。
さらに言うと、ここは山だし。
あまり遠くには行けないはず」
「さすが理名ちゃん、そういうところ、よく気がつくし見てるね」
「そういうのも、ちゃんと女子力だよ」
そう言われて、照れながらエレベーターから降りた。
けれど、すぐに真顔に戻る。
彼女を探した後でも、照れることなんていくらでも出来るのだ。
ロビーに着くと、デニム地のブルゾンを持った麗眞くんがいた。
「ごめん、お待たせ」
「そんな待ってないから、大丈夫。
さぁ、探すか。
ったく。
いつもこうなんだよな、椎菜」
そう言って、麗眞くんは外に出て行った。
私たちも、それを追うようにして外に出て、各々散らばる。
「あ!」
「美冬ちゃん、華恋ちゃん!」
彼女たちと、電話番号を交換した。
「引き止めてごめん、2人との連絡手段が欲しかったの」
私のその言葉に、二人は親指を立てた。
何の合図かはこの際考えない。
まずは、彼女を探すことが先決だ。
「椎菜ちゃん?
どこー?」
時々、彼女の名前を呼びながら、ホテルの周りの草むらや電柱の裏まで探す。
駐車場のそばの太い樫の木の傍に、ぼんやり人影があった。
そっと覗いてみると、その人影は淡い花柄のマキシワンピースを着ていた。
「椎菜ちゃん?
皆心配してるよ?
早くホテル戻ろう。
そんな薄着で、風邪引くし」
「理名ちゃん?理名ちゃんだよね?
そこにいるの。
声でわかるよ。
何よ!
理名ちゃん、ただの1度だって、本気で人を好きになったことないんでしょ?
そんな人に、私の気持ちなんて分かんない!
好きな人が、他の女の子と二人きりで話しるの見ると、その女の子にジェラシー感じるの。
しかも、好きな男の人の腕の中にいるのが、自分じゃない別の人だなんて。
……信じられないし許せないって!
そう、思っちゃうの。
そんな気持ち、理名ちゃんは一度だって味わったことないでしょ!」
「……」
私は、椎菜ちゃんの言葉に何も言い返せずに押し黙った。
彼女の言う通り、そんな恋愛なんてただの一度も経験がないからだ。
私が無言で立ちすくんでいると、人影がゆっくり崩れ落ちるのがわかった。
「椎菜ちゃん!?」
うずくまるように膝を抱えている彼女の肩に少し触れただけでも分かるくらい、身体が熱を持っていた。
何分だとか、正確な時間なんて本人にしかわからない。
けれども冷たい風に晒されながら湯上りの身体で屋外にいたのだ。
風邪を引くのもうなずけた。
医師志望とはいえ、ここには何の道具もないのだ。
どうすることも出来ない。
そんな知識も到底持ち合わせていない。
肩を支えた格好のままフリーズしていると、肩に私の手ごと、デニム地のノーカラーブルゾンが着せかけられた。
その主は、麗眞くんだった。
「麗眞くん!?」
その後ろから、彼の執事、相沢さんがついてきていた。
「完全なる発熱のようですね。
リムジンに乗せて、ホテルまでお運びしましょう。
理名様もどうぞ、お乗り下さい」
リムジンに乗り込んだ後、美冬ちゃんに連絡をとる。
連絡手段は、電話番号でやり取りができる、ショートメッセージサービスだ。
”椎菜ちゃん確保した。
ホテル前で待っててほしい。”
返事は数秒で携帯電話に届いた。
はやすぎないか?
”麗眞くんの執事さんの車乗ってる感じ?
待ってるからねー”
これは美冬ちゃんからだ。
”美冬から聞いたー!!
見つかったんだって?
お疲れ様ー!
椎菜ちゃん、体調崩してるとかない?”
これは華恋ちゃんからだ。
”熱あるっぽい”
私が送信すると、すぐに返事がきた。
驚きの顔文字だけを送ってきたのは華恋ちゃんだ。
”ホテルのロビーに私たちの班員と理名ちゃんたちの班員と、担任の先生がいるみたいだから、そう伝えておく”
美冬ちゃんのメッセージを見た後、外の景色を見る。
もう私たちが泊まるホテルの前にいた。
ホテルに着いたらしい。
やっぱり早すぎる。