情報の授業と化学、世界史の授業。
深月は教室に戻って来たが、華恋は戻ってこなかった。
そのまま忌引になるという。
秋山くんも、しばらく学校を休むと言って、深月の耳元で二言三言話をした。
HRが終わったら、鞄を持ってすぐに帰ってしまった。
深月の母親が心配だ。
自分を責めて、自傷行為等に走ってはいないだろうか。
部室の側のベンチで、気丈に振る舞って母親に連絡する深月の声を、聞いてしまった。
「気に病むことないよ、お母さん。
今までどれだけの人を更正させてきたかなんて、娘の私が一番知ってるんだから!
琥珀のお母さんと、私のお父さんを更正させてなかったら、琥珀も私も今ここにいないわけだし。
いつでもお母さんは私の目標で、理想の人。
でも、いつか精神科医として、お母さんを超えるんだからね!」
頼もしい娘だ。
深月は、秋山くんの家から今は通学しているらしい。
平日の5日間だけなら、と、期間限定で大手広告会社で働いている秋山くんのお姉さんも来ているとのことだ。
「退屈しないよ。
ミッチーの両親もお姉さんも、本当の家族みたいに接してくれるし。
栄養バランスいい食事も作ってくれて、アットホームでね。
私の家とは違う温かさを感じるの。
いつでもおいで、って言ってくれたし。
ミッチーのお姉さんなんて、一人暮らししてる社宅に遊びに来てほしいとまで言ってくれて。
逆に私なんかが行っていいのかなぁ、とも思うけど」
「いいんじゃない。
深月はいつもと違う環境で気を張ってる。
お母さんのことは少し頭から抜けてくれるんじゃない?」
その後、麗眞くんから、今秋山くんはアメリカのボストンにいると聞いた。
娘の深月に似て責任感の強い彼女の母親が心配だったのだという。
何かの拍子に自分の命は絶たないにしても、自傷行為等をしないかが。
今季からボストンが本拠地の球団に移籍した、打者として絶好調の野球選手の活躍を見てから帰国するという。
優雅に野球観戦も兼ねてたんかい……
1週間後、何事もなかったように学校に登校してきた秋山くん。
麗眞くんに、世界で打者と投手の2wayPlayerとして活躍する選手のグッズを紙袋いっぱいに詰めてきて、渡していた。
「親父さんとおふくろさんが好きなんだろ?
確か、オールスターゲームになると会場まで行くほどとか。
まったく、本拠地じゃないボストンの球場にまでグッズあるとか、どれだけ人気凄まじいんだよ……」
「サンキュ、助かった」
ボストンが本拠地の球場の球団のロゴが入ったネイビーの帽子をプレゼントしていた。
2年前の野球の大会、さらにその前の年の大会もミーハー心から観ていて、少なからず興味を持っていたらしい深月。
「ありがと。何か球団のファンでもないのに、不思議な気分」
「球団に興味なくても、ファッションとして被ってる人を普通に見かけるしな」
「ご褒美。
急に俺居なくなって寂しかったろ。
泣き言言わないでいい子で待てた可愛い子には、もっと甘いご褒美がいいか?」
「もう、朝っぱらからイチャつかないの。
結婚が早いのは美冬と小野寺くんか、麗眞くんと椎菜がいい勝負かと思ってたけど。
深月と秋山くんも名乗りをあげる感じね、このままじゃ」
聞き慣れた声がした方に顔を向けると、制服姿の華恋が立っていた。
眠れていないのか、目の下に試験前の私より酷いクマを作っている。
「華恋!?
もう登校していいの?
忌引は明日までのはずなんじゃ……」
深月がそう言った時、華恋のスマホが着信を告げた。
教室から出ることなく、そのまま電話に出た彼女。
『由紀さんですか?
もう大丈夫です。
ご心配、ありがとうございます。
貴女のせいとか、そんなことはないので、気に病まないで下さいね。
何だか、最期に誰かを守った、って聞いて。
ちゃんとあの人にも良心の欠片は残ってたんだな、って思えたんです。
いろいろ不器用で、感情表出が人よりかなり不得手なだけだったのかな、って。
いろいろ吹っ切れそうです。
ちゃんとあっちの世界では私の弟と上手くやってほしいな、とか思えるくらいには。
と言っても、私が無理をしていないか心配でしょう。
由紀さんも、心の整理がついたら、今度は私にカウンセリングをお願いします』
自分の心も痛くて堪らないはずなのに、あっけらかんとそんなことを言ってのける華恋。
私が彼女の立場だったら、あんな台詞を言えるかどうかすら怪しい。
強い子だなぁ、華恋は。
深月は教室に戻って来たが、華恋は戻ってこなかった。
そのまま忌引になるという。
秋山くんも、しばらく学校を休むと言って、深月の耳元で二言三言話をした。
HRが終わったら、鞄を持ってすぐに帰ってしまった。
深月の母親が心配だ。
自分を責めて、自傷行為等に走ってはいないだろうか。
部室の側のベンチで、気丈に振る舞って母親に連絡する深月の声を、聞いてしまった。
「気に病むことないよ、お母さん。
今までどれだけの人を更正させてきたかなんて、娘の私が一番知ってるんだから!
琥珀のお母さんと、私のお父さんを更正させてなかったら、琥珀も私も今ここにいないわけだし。
いつでもお母さんは私の目標で、理想の人。
でも、いつか精神科医として、お母さんを超えるんだからね!」
頼もしい娘だ。
深月は、秋山くんの家から今は通学しているらしい。
平日の5日間だけなら、と、期間限定で大手広告会社で働いている秋山くんのお姉さんも来ているとのことだ。
「退屈しないよ。
ミッチーの両親もお姉さんも、本当の家族みたいに接してくれるし。
栄養バランスいい食事も作ってくれて、アットホームでね。
私の家とは違う温かさを感じるの。
いつでもおいで、って言ってくれたし。
ミッチーのお姉さんなんて、一人暮らししてる社宅に遊びに来てほしいとまで言ってくれて。
逆に私なんかが行っていいのかなぁ、とも思うけど」
「いいんじゃない。
深月はいつもと違う環境で気を張ってる。
お母さんのことは少し頭から抜けてくれるんじゃない?」
その後、麗眞くんから、今秋山くんはアメリカのボストンにいると聞いた。
娘の深月に似て責任感の強い彼女の母親が心配だったのだという。
何かの拍子に自分の命は絶たないにしても、自傷行為等をしないかが。
今季からボストンが本拠地の球団に移籍した、打者として絶好調の野球選手の活躍を見てから帰国するという。
優雅に野球観戦も兼ねてたんかい……
1週間後、何事もなかったように学校に登校してきた秋山くん。
麗眞くんに、世界で打者と投手の2wayPlayerとして活躍する選手のグッズを紙袋いっぱいに詰めてきて、渡していた。
「親父さんとおふくろさんが好きなんだろ?
確か、オールスターゲームになると会場まで行くほどとか。
まったく、本拠地じゃないボストンの球場にまでグッズあるとか、どれだけ人気凄まじいんだよ……」
「サンキュ、助かった」
ボストンが本拠地の球場の球団のロゴが入ったネイビーの帽子をプレゼントしていた。
2年前の野球の大会、さらにその前の年の大会もミーハー心から観ていて、少なからず興味を持っていたらしい深月。
「ありがと。何か球団のファンでもないのに、不思議な気分」
「球団に興味なくても、ファッションとして被ってる人を普通に見かけるしな」
「ご褒美。
急に俺居なくなって寂しかったろ。
泣き言言わないでいい子で待てた可愛い子には、もっと甘いご褒美がいいか?」
「もう、朝っぱらからイチャつかないの。
結婚が早いのは美冬と小野寺くんか、麗眞くんと椎菜がいい勝負かと思ってたけど。
深月と秋山くんも名乗りをあげる感じね、このままじゃ」
聞き慣れた声がした方に顔を向けると、制服姿の華恋が立っていた。
眠れていないのか、目の下に試験前の私より酷いクマを作っている。
「華恋!?
もう登校していいの?
忌引は明日までのはずなんじゃ……」
深月がそう言った時、華恋のスマホが着信を告げた。
教室から出ることなく、そのまま電話に出た彼女。
『由紀さんですか?
もう大丈夫です。
ご心配、ありがとうございます。
貴女のせいとか、そんなことはないので、気に病まないで下さいね。
何だか、最期に誰かを守った、って聞いて。
ちゃんとあの人にも良心の欠片は残ってたんだな、って思えたんです。
いろいろ不器用で、感情表出が人よりかなり不得手なだけだったのかな、って。
いろいろ吹っ切れそうです。
ちゃんとあっちの世界では私の弟と上手くやってほしいな、とか思えるくらいには。
と言っても、私が無理をしていないか心配でしょう。
由紀さんも、心の整理がついたら、今度は私にカウンセリングをお願いします』
自分の心も痛くて堪らないはずなのに、あっけらかんとそんなことを言ってのける華恋。
私が彼女の立場だったら、あんな台詞を言えるかどうかすら怪しい。
強い子だなぁ、華恋は。