ゆさゆさと揺さぶられて目が覚めた。
いつの間にか眠ってしまったらしい。
ドイツの冬は寒い、と資料にあった通りだ。
暖炉に火がついている。
これで暖まろうとベッドから立ち上がろうとしたが、頭がズキと痛んだ。
そこに、低いが優しい声色が降ってきた。
「起きた?
理名。
変に緊張させすぎたからか。
すまなかったな。
理名、熱あるんだからまだ寝ときな。
ちょっとただの風邪にしては咳の仕方が異常だったから、高沢さんを呼んでいるところ。
もうすぐ来るって。
俺が研修している病院に、そのまま連れて行くよ。
椎菜ちゃん、っていう先客がいるみたいだけどね」
「椎菜が!?」
「なんでも、マイコプラズマ肺炎だそうだ。
理名も怪しいから、病院についたらその検査だ。
咳の仕方がただの風邪の咳じゃなかった。
あと10分くらいで来るって、高沢さん。
もう少し、俺が理名に気を配ってやれればよかったのに。
ごめん。
大事な彼女をこんな目に合わせて、最悪だ。
本当は、もっといろいろな話もしたかったのに」
身体が熱いのは、熱のせいか。
それとも、拓実にきつく抱きしめられているせいか。
拓実の優しい声色は、薄れゆく意識と共に徐々に聞こえなくなっていった。
「ん……」
目が覚めると、硬いベッドに寝かされていた。
腕には点滴の針が刺されていた。
「起きた?
全く、麗眞から文化祭のときの映像貰ったから観たよ。
理名、頑張りすぎだ。
無理が祟ったんだろ。
あ、男装するなら、俺に言ってくれれば服貸したのに。
とにかく、これ飲んでもう少し寝てて。
マイコプラズマ肺炎だってさ」
不意に拓実の顔がゆっくり近づいて、柔らかい感触と共に何かが口内に流し込まれた。
これ、もしかしなくても口移し、ってやつ?
「点滴だけじゃ脱水になるから、経口補水液。
寝てな。
耐性菌っぽいから、強い抗生剤出るっぽいな。
副作用も、それなりに強いみたい」
頭を優しく撫でてくれた手の温もりが心地良くて、彼にお礼を言う前に眠りに落ちていた。
夢の中でも拓実の優しい声色が聞こえた気がして、目を覚ました。
彼は横にいて、私の手を握りながら眠っていた。
男の人にしては切れ長で綺麗なまつげが羨ましい。
彼の顔を見つめていると、ふと彼の形の良い唇が私の名前を呼んだ。
私の夢でも、見てくれてる?
彼の綺麗な髪を梳くように撫でて、そっと唇を重ねた。
「理名、可愛い」
そっと太腿に手を添えられて、身体がピク、と跳ねた。
そのせいで、彼は起きてしまったようだ。
「理名?
ごめん……!
俺、夢に理名が出てきたから無意識で。
何やってんだろ、しかも彼女とはいえど病人に。
本当にごめん!」
「謝らないで。
次に会った時に、この続きお願いね?
その時には、多分。
今より覚悟は出来てると思うから」
「おいおい。
次のデートの時にロストする約束か。
お熱いねぇ、お2人さんは」
顔を出したのは、マイコプラズマ肺炎の彼女を心配して来たのであろう、麗眞くんだ。
「皆のガールズトークの餌食になるの、私だけか。
それもなんか寂しいな。
深月とか華恋から集中砲火受けそう」
そう言うのは琥珀だ。
拓実が目をパチパチと瞬かせている。
琥珀の女性らしい服装に、それがかなり似合うことに驚いているようだ。
「お前たち、どっちも自分の限界分からないまま頑張りすぎてぶっ倒れるタイプだろ。
拓実も理名ちゃんもお似合いだ。
お前らの仲を引き裂いたりしないけどな。
そういうの、俺は得意じゃないし」
「圭吾!?
お前、理名と同じ高校だったのか!」
拓実が桜木くんの下の名前を呼び捨てにしているのを初めて聞いた。
本当に拓実と知り合いだったんだなぁ、と実感が湧いた。
いつの間にか眠ってしまったらしい。
ドイツの冬は寒い、と資料にあった通りだ。
暖炉に火がついている。
これで暖まろうとベッドから立ち上がろうとしたが、頭がズキと痛んだ。
そこに、低いが優しい声色が降ってきた。
「起きた?
理名。
変に緊張させすぎたからか。
すまなかったな。
理名、熱あるんだからまだ寝ときな。
ちょっとただの風邪にしては咳の仕方が異常だったから、高沢さんを呼んでいるところ。
もうすぐ来るって。
俺が研修している病院に、そのまま連れて行くよ。
椎菜ちゃん、っていう先客がいるみたいだけどね」
「椎菜が!?」
「なんでも、マイコプラズマ肺炎だそうだ。
理名も怪しいから、病院についたらその検査だ。
咳の仕方がただの風邪の咳じゃなかった。
あと10分くらいで来るって、高沢さん。
もう少し、俺が理名に気を配ってやれればよかったのに。
ごめん。
大事な彼女をこんな目に合わせて、最悪だ。
本当は、もっといろいろな話もしたかったのに」
身体が熱いのは、熱のせいか。
それとも、拓実にきつく抱きしめられているせいか。
拓実の優しい声色は、薄れゆく意識と共に徐々に聞こえなくなっていった。
「ん……」
目が覚めると、硬いベッドに寝かされていた。
腕には点滴の針が刺されていた。
「起きた?
全く、麗眞から文化祭のときの映像貰ったから観たよ。
理名、頑張りすぎだ。
無理が祟ったんだろ。
あ、男装するなら、俺に言ってくれれば服貸したのに。
とにかく、これ飲んでもう少し寝てて。
マイコプラズマ肺炎だってさ」
不意に拓実の顔がゆっくり近づいて、柔らかい感触と共に何かが口内に流し込まれた。
これ、もしかしなくても口移し、ってやつ?
「点滴だけじゃ脱水になるから、経口補水液。
寝てな。
耐性菌っぽいから、強い抗生剤出るっぽいな。
副作用も、それなりに強いみたい」
頭を優しく撫でてくれた手の温もりが心地良くて、彼にお礼を言う前に眠りに落ちていた。
夢の中でも拓実の優しい声色が聞こえた気がして、目を覚ました。
彼は横にいて、私の手を握りながら眠っていた。
男の人にしては切れ長で綺麗なまつげが羨ましい。
彼の顔を見つめていると、ふと彼の形の良い唇が私の名前を呼んだ。
私の夢でも、見てくれてる?
彼の綺麗な髪を梳くように撫でて、そっと唇を重ねた。
「理名、可愛い」
そっと太腿に手を添えられて、身体がピク、と跳ねた。
そのせいで、彼は起きてしまったようだ。
「理名?
ごめん……!
俺、夢に理名が出てきたから無意識で。
何やってんだろ、しかも彼女とはいえど病人に。
本当にごめん!」
「謝らないで。
次に会った時に、この続きお願いね?
その時には、多分。
今より覚悟は出来てると思うから」
「おいおい。
次のデートの時にロストする約束か。
お熱いねぇ、お2人さんは」
顔を出したのは、マイコプラズマ肺炎の彼女を心配して来たのであろう、麗眞くんだ。
「皆のガールズトークの餌食になるの、私だけか。
それもなんか寂しいな。
深月とか華恋から集中砲火受けそう」
そう言うのは琥珀だ。
拓実が目をパチパチと瞬かせている。
琥珀の女性らしい服装に、それがかなり似合うことに驚いているようだ。
「お前たち、どっちも自分の限界分からないまま頑張りすぎてぶっ倒れるタイプだろ。
拓実も理名ちゃんもお似合いだ。
お前らの仲を引き裂いたりしないけどな。
そういうの、俺は得意じゃないし」
「圭吾!?
お前、理名と同じ高校だったのか!」
拓実が桜木くんの下の名前を呼び捨てにしているのを初めて聞いた。
本当に拓実と知り合いだったんだなぁ、と実感が湧いた。



