お客さんを入れる前に、まずは私たちの生徒だけで体育館に集まり、男装女子女装男子コンテストを行う。

司会は例のごとく、美冬だ。

『始まりました、今年度からの催しであります、男装女子女装男子コンテスト!

皆さんの推しを見つけちゃおう!

まずはエントリーナンバー1番、女装しても学園イチの可愛さなのか?

宝月 麗眞くんこと、メイドのまーちゃんの登場です!

スポットライトが照らす先には、メイド服姿の麗眞くんがいた。

自分の彼女を参考に盛ったのだろう、割と胸の膨らみのサイズがすごいことになっていた。

手を入れたのもおそらく、椎菜なのだろう。

「お帰りなさいませ、ご主人様!

メイドの私が居なくて、寂しかったですか?

ご主人様、お風呂になさいますか?
お食事にしますか?

それとも、メイドの私になさいますか?」

予め録音したのであろう、メイドさんがいいという声。

声色からして、いつもの彼の声だろう。

「ご主人様の頼みなら、断れませんね?

今からまーちゃんメイドが、ご主人様のためにご奉仕しますね?」

上目遣いでのうる目が決まったところで、スポットライトは消えた。

私達の仲間の秋山くんや小野寺くん以外の皆のハートは彼女に奪われたようだった。

ああ、これ優勝だな。

コンテストは進んでいき、女装男子コンテストから女装男子コンテストへと移った。

司会は自然に美冬から小野寺くんに変わっている。

「エントリーナンバー9番、

医療知識なら誰にも負けない、未来の医師、岩崎 理名くん!」

私の番だ。

理名みたいな元が身長高くてカッコいいタイプは、奇をてらった寸劇なんてやらなくていいの!

普通にモデル歩きするだけでサマになるわ」

という深月のアドバイスを受けて、普通にモデル歩きをした。

練習に付き合ってくれたのは、母がモデルの椎菜。
よく父に付き添って芸能人とあってモデルともコネがある、琥珀。
その二人だ。

琥珀はライバルなのだが、どちらが優勝しても恨みっこなし、ということになった。

「エントリーナンバー9番の方、美しいモデル歩きをありがとうございました!

続いて、エントリーナンバー10番!

父がアクション俳優、母がピアニスト、自らもジークンドーを嗜む、正義感の強い帳 琥珀くんだ!」

琥珀の番だ。

見たことのあるメイド服の女の子が、金髪の男性に絡まれていた。

「ちょっと!
嫌がってるだろ?

離してやれよ!」

そこに台詞を言いながら琥珀が登場、男に有無を言わせずジークンドーの技を繰り出し、相手を軽々床の上に寝転がせた。


全てのエントリーナンバーの人が呼ばれた。

この結果は、一般人の投票も終えた後、後夜祭で発表されるという。


私たちが劇を行う教室に、お客さんは殺到していた。

無理矢理休みをもぎ取ったのであろう華恵さんや、伊達 香澄さん。

後輩の友映ちゃんとその兄、成司くんの姿もあった。

そして、友映ちゃんの隣には、見たことのない綺麗な茶髪の男の子がいた。

劇は順調に進み、劇が終わると、プロジェクターにメイキング映像が流された。

メイキング映像中に、役者たちは一息つくのだ。