美味しいお菓子を囲んで盛り上がるリビング。
さながら、宴会みたいだ。
プレゼントを、順番にお披露目していく。
美冬と小野寺くんからはノイズキャンセリング機能付きのイヤホン。
深月と秋山くんからはルームウェア。
椎菜と麗眞からはヘアミストと、テーマパークのチケット。
「きっと、家にいることが多くなるだろうけど。
たまに外出るときにいいだろうと思って、イヤホンにした。
ノイキャンだから、音楽聴くときに音量上げすぎないでいいから、疲れることもないはずなんだ」
「家にいること多くなるだろうな、と思ったから、ルームウェアにしたよ。
コットン素材にしたから、洗うのも楽なはず。
たくさん着てね!」
「私は家にいても、香りで気分を上げてほしいから、ヘアミストにしたよ。
出かけるときにも気分上がるように、碧がよく使ってるハンドクリームのラインと合わせて選んでみたんだ」
「俺からは、ここからだと、遠いけどさ。
絶叫マシンわりとある、テーマパークチケットをプレゼント。
パレードも昼夜問わずやるから、絶叫マシン苦手でも楽しめるよ。
家にいるばかりでも気が滅入るだろう。
たまにはこういうとこ行くのも、ありなんじゃない?」
「ありがとう、皆!」
「ふふん。
これだけじゃないんだなー、実は」
香澄さんがリモコンのスイッチを押すと、動画が再生された。
正瞭賢での宿泊オリエンテーション。
バスの中や、牧場でのバーベキューに花火。
球技大会や、女子陣で盛り上がったババ抜き。
体育祭や、文化祭の様子などがダイジェストで収められていた。
その映像の後は、碧に向けたビデオレターが流された。
『理名です。
碧と過ごした日々、楽しかったよ!
少し身体は丈夫じゃないにしろ、メンタルはそれを補う強さがあって。
私と父がまだ不仲だった頃、その愚痴を聞いてくれたのも碧だったね。
愚痴を聞いた上でちゃんと的確な意見を言ってくれるところも碧らしいな、って思った。
通信制高校でも、頑張ってね!
時々は会おうね!
呼吸器内科医になる、って目標は、碧といたからできたんだと思う。
何かあったらいつでも連絡してね!
待ってます!』
自分が寄せたメッセージを改めて聴くと、恥ずかしい。
20分ほどでメッセージの再生が終わると、今度は色紙を渡した。
色紙自体は水に濡れても大丈夫なようにラミネート加工がされている。
これは椎菜のアイデアだ。
なおかつ、裏には先程の動画がいつでも観られるようにQRコードが印刷されている。
「皆、ありがとう!
とっても嬉しい。
ここまでしてもらえて、誕生日より素敵な1日になったよ!」
「そう言ってもらえて何よりだよ。
ほら、まだまだお菓子たくさんあるから、食べよ、食べよ!」
琥珀が自然に、女子の輪に琥珀を入れて何やら女子ならではのトークを繰り広げている。
私はその輪からさり気なく抜けて、お手洗いに向かった。
「あの、皆。
ちょっと情報が欲しいの。
黒沢、っていう名字と、明るい茶髪の男の子。
その人のこと、知らないかな?
名前と髪の色は印象的だったからよく覚えてるんだけど、それ以外は分からないの。
その人に、喘息発作が出たとき、代わりに助けてもらったから。
康介は頼りにならないし。
だから、お礼がしたいな、って思ってるの。
通信制高校への編入することを、勧めてくれたのも、実はその彼なんだ」
「黒沢……?
ああ、黒沢成司くんね。
バイト先は私と同じだよ。
知ってるも何も、知り合いだもの。
麗眞くんのお父さんと高校時代は同級生だったからね?
成司の両親。
私たちが中学校に上がるくらいまではよくグアムの別荘で集まってたし。
黒沢くんは習い事が忙しくて、なかなか来られなかったのよ。
だから、小学校3年生頃の顔しか知らなくて。
バイト先で琥珀?って言われてビックリしたもん」
トイレに立った私は、通りすがりにそんな琥珀の話を聞いてしまった。
っていうか、このメンツ、麗眞くんの昔からの知り合い、多くない?
トイレのドアが開いて、出てきた女性と危うくぶつかるところだった。
「あら、ごめんなさい。
ケガはないかしら?」
「大丈夫、です」
声をかけてきたのは、伊達さんだ。
このホテルのオーナーの娘らしい。
その言葉に、私は迷わず首を縦に振った。
「楽しめてるなら良かったわ。
何か困ったら言ってね?
このホテルのことでも、それ以外でも。
文化祭のときとか、洋服デザインするのとかも力になれると思うわ。
私の母が得意だから。
それから、何か両親と揉めて困ったら、その時も連絡を貰えるかしら。
いっときの住む場所も提供できたりすると思うわ。
それじゃ、引き続き楽しんでね?」
通りすがりに、私のシャツのポケットに名刺を突っ込んで、彼女は去っていった。
戻った私は、ガールズトークの輪に入る。
入るつもりはなかったのだが、入らざるを得なくなった、が正しい。
喘息発作が起きた場合、治まるまで何をすればいいか聞かれたためだ。
時間をおいて、薬を最低2回は吸入することと伝えた。
「その、碧と一緒にいた竹田、って男の人、最低だよ!
碧が発作で苦しんでるのを、むしろヤバい人を見るみたいな目で見ていただけで、何もしなかったなんて。
ありえないよね、ほんと」
深月が憤慨したその瞬間、美冬がその場にうずくまった。
「美冬?
大丈夫?」
どうやら、軽い過呼吸のようだ。
「美冬、落ち着け。
ゆっくり深呼吸だ。
息をゆっくり吐くのを意識してな。
大丈夫。
俺がいるから」
小野寺くんの美冬の扱いは手慣れたものだった。
優しく、時々背中を擦ると彼女は落ち着いた。
「ごめん。
竹田、って苗字、出しちゃったせいだよね?
美冬、ごめんね?」
「大丈夫。
康太から、兄も相当遊び人で、平気で女の子を弄んでる、って噂はかねがね聞いてたの。
まさか、その牙に碧が引っかかったなんて。
……許せない。
でも、成司くんが助けてくれてよかったね」
荒い呼吸のままそう言った美冬。
彼女は小野寺くんに連れられて、少しの間、別室に行くことにした。
「悪いな、今は美冬の側にいてやりたい。
落ち着いたら、合流する。
プールに入る時に合流できるかは五分五分だけど」
小野寺くんは、心配して駆け寄ってきた麗眞くんに何やら耳打ちした。
その後、美冬と共に別室に姿を消した。
さながら、宴会みたいだ。
プレゼントを、順番にお披露目していく。
美冬と小野寺くんからはノイズキャンセリング機能付きのイヤホン。
深月と秋山くんからはルームウェア。
椎菜と麗眞からはヘアミストと、テーマパークのチケット。
「きっと、家にいることが多くなるだろうけど。
たまに外出るときにいいだろうと思って、イヤホンにした。
ノイキャンだから、音楽聴くときに音量上げすぎないでいいから、疲れることもないはずなんだ」
「家にいること多くなるだろうな、と思ったから、ルームウェアにしたよ。
コットン素材にしたから、洗うのも楽なはず。
たくさん着てね!」
「私は家にいても、香りで気分を上げてほしいから、ヘアミストにしたよ。
出かけるときにも気分上がるように、碧がよく使ってるハンドクリームのラインと合わせて選んでみたんだ」
「俺からは、ここからだと、遠いけどさ。
絶叫マシンわりとある、テーマパークチケットをプレゼント。
パレードも昼夜問わずやるから、絶叫マシン苦手でも楽しめるよ。
家にいるばかりでも気が滅入るだろう。
たまにはこういうとこ行くのも、ありなんじゃない?」
「ありがとう、皆!」
「ふふん。
これだけじゃないんだなー、実は」
香澄さんがリモコンのスイッチを押すと、動画が再生された。
正瞭賢での宿泊オリエンテーション。
バスの中や、牧場でのバーベキューに花火。
球技大会や、女子陣で盛り上がったババ抜き。
体育祭や、文化祭の様子などがダイジェストで収められていた。
その映像の後は、碧に向けたビデオレターが流された。
『理名です。
碧と過ごした日々、楽しかったよ!
少し身体は丈夫じゃないにしろ、メンタルはそれを補う強さがあって。
私と父がまだ不仲だった頃、その愚痴を聞いてくれたのも碧だったね。
愚痴を聞いた上でちゃんと的確な意見を言ってくれるところも碧らしいな、って思った。
通信制高校でも、頑張ってね!
時々は会おうね!
呼吸器内科医になる、って目標は、碧といたからできたんだと思う。
何かあったらいつでも連絡してね!
待ってます!』
自分が寄せたメッセージを改めて聴くと、恥ずかしい。
20分ほどでメッセージの再生が終わると、今度は色紙を渡した。
色紙自体は水に濡れても大丈夫なようにラミネート加工がされている。
これは椎菜のアイデアだ。
なおかつ、裏には先程の動画がいつでも観られるようにQRコードが印刷されている。
「皆、ありがとう!
とっても嬉しい。
ここまでしてもらえて、誕生日より素敵な1日になったよ!」
「そう言ってもらえて何よりだよ。
ほら、まだまだお菓子たくさんあるから、食べよ、食べよ!」
琥珀が自然に、女子の輪に琥珀を入れて何やら女子ならではのトークを繰り広げている。
私はその輪からさり気なく抜けて、お手洗いに向かった。
「あの、皆。
ちょっと情報が欲しいの。
黒沢、っていう名字と、明るい茶髪の男の子。
その人のこと、知らないかな?
名前と髪の色は印象的だったからよく覚えてるんだけど、それ以外は分からないの。
その人に、喘息発作が出たとき、代わりに助けてもらったから。
康介は頼りにならないし。
だから、お礼がしたいな、って思ってるの。
通信制高校への編入することを、勧めてくれたのも、実はその彼なんだ」
「黒沢……?
ああ、黒沢成司くんね。
バイト先は私と同じだよ。
知ってるも何も、知り合いだもの。
麗眞くんのお父さんと高校時代は同級生だったからね?
成司の両親。
私たちが中学校に上がるくらいまではよくグアムの別荘で集まってたし。
黒沢くんは習い事が忙しくて、なかなか来られなかったのよ。
だから、小学校3年生頃の顔しか知らなくて。
バイト先で琥珀?って言われてビックリしたもん」
トイレに立った私は、通りすがりにそんな琥珀の話を聞いてしまった。
っていうか、このメンツ、麗眞くんの昔からの知り合い、多くない?
トイレのドアが開いて、出てきた女性と危うくぶつかるところだった。
「あら、ごめんなさい。
ケガはないかしら?」
「大丈夫、です」
声をかけてきたのは、伊達さんだ。
このホテルのオーナーの娘らしい。
その言葉に、私は迷わず首を縦に振った。
「楽しめてるなら良かったわ。
何か困ったら言ってね?
このホテルのことでも、それ以外でも。
文化祭のときとか、洋服デザインするのとかも力になれると思うわ。
私の母が得意だから。
それから、何か両親と揉めて困ったら、その時も連絡を貰えるかしら。
いっときの住む場所も提供できたりすると思うわ。
それじゃ、引き続き楽しんでね?」
通りすがりに、私のシャツのポケットに名刺を突っ込んで、彼女は去っていった。
戻った私は、ガールズトークの輪に入る。
入るつもりはなかったのだが、入らざるを得なくなった、が正しい。
喘息発作が起きた場合、治まるまで何をすればいいか聞かれたためだ。
時間をおいて、薬を最低2回は吸入することと伝えた。
「その、碧と一緒にいた竹田、って男の人、最低だよ!
碧が発作で苦しんでるのを、むしろヤバい人を見るみたいな目で見ていただけで、何もしなかったなんて。
ありえないよね、ほんと」
深月が憤慨したその瞬間、美冬がその場にうずくまった。
「美冬?
大丈夫?」
どうやら、軽い過呼吸のようだ。
「美冬、落ち着け。
ゆっくり深呼吸だ。
息をゆっくり吐くのを意識してな。
大丈夫。
俺がいるから」
小野寺くんの美冬の扱いは手慣れたものだった。
優しく、時々背中を擦ると彼女は落ち着いた。
「ごめん。
竹田、って苗字、出しちゃったせいだよね?
美冬、ごめんね?」
「大丈夫。
康太から、兄も相当遊び人で、平気で女の子を弄んでる、って噂はかねがね聞いてたの。
まさか、その牙に碧が引っかかったなんて。
……許せない。
でも、成司くんが助けてくれてよかったね」
荒い呼吸のままそう言った美冬。
彼女は小野寺くんに連れられて、少しの間、別室に行くことにした。
「悪いな、今は美冬の側にいてやりたい。
落ち着いたら、合流する。
プールに入る時に合流できるかは五分五分だけど」
小野寺くんは、心配して駆け寄ってきた麗眞くんに何やら耳打ちした。
その後、美冬と共に別室に姿を消した。



