「おはよー」
眠そうに教室に入ると、深月や美冬の明るい挨拶が迎えてくれた。
「今日も眠そうだねぇ。
ちょっとクマできてない?
寝不足?」
「もー、拓実くんに心配されるぞ?」
「うん、気をつけたいけど、最近全然連絡取れてなくて」
「え?そうなの?」
「それもそれで心配だけど、仕方ないよねぇ。
拓実くんも医学部目指して勉強中だし?
拓実くんのとこも医学部の進学率、ウチの高校に負けず劣らずいいみたいじゃん?」
そんな話をしていると、バタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
「何してるのよ!
モーニングコールしたでしょ!
麗眞ったら。
どういうことよ、もう!」
「仕方ないだろ?
椎菜の声だけじゃ物足りない。
蕩けた可愛い顔見ないと寝た気がしない」
「とかいって、昨日用事があるって言って、私を帰らせたのはどこの誰ですかね?
私がちゃんと麗眞の家に泊まっていたら今頃はとっくに教室着いてたはずじゃない?
結局私が家まで迎えに行ってインターホン鳴らして起こしたんじゃん、もう」
「悪かった。
ちょっと気になることがあってさ」
「こらこら、朝から痴話ゲンカなんて。
らしくないぞー?
お二人さん」
「おはよー深月。
美冬も理名も。
麗眞ったら、昨日は用事があって私をいつもみたいに泊めてあげられないから、今日はちゃんと家で過ごしてほしい。
その代わり、朝の7時にモーニングコールしてほしい。
他でもない、麗眞からのお願いだから、そのとおりにしたのに。
結局起きないの。
まったくもう」
「まぁまぁ。麗眞くんもいろいろあるんだよ。
心配で琥珀ちゃんの情報でも集めてたんじゃない?」
「確かにそうかも。
昨日のあの感じ。
琥珀ちゃん本人は気にしてなかったけど、
あれだけ駅のホームで大立ち回りしたらさ、少なからず話題にはなるし。
今の時代だからSNSとかにもあげられるはず。
痴漢してる仲間とかに琥珀ちゃんの情報渡ったら、さすがに危なくない?」
「腕力じゃ敵わないって分かって、金属バットとかスタンガンとか持ってくるかも。
そういう報復とかも気をつけろよって意味の、麗眞くんのあの言葉だったんだろうし」
皆があれこれと憶測を述べていると、不安げに私たちの集団を凝視している男の子と目が合った。
その視線に、聡い深月は気付いたようだ。
「えっと、私たち、別に琥珀ちゃんの悪口を言ってたわけじゃないのよ?
だから、誤解しないでね?」
「それは知ってるよ。
俺は、そこにいる公認カップルの片割れの男が気になるんだよ。
昨日、午後の授業の合間に琥珀と2人で何やら話してたし」
その言葉で、深月は何かを勘付いたようだ。
同じく、麗眞くんの顔にも同じように納得の色が浮かんだ。
「お前らは授業の準備とかしてな。
俺は、あの子と話してくるわ」
「麗眞、気をつけてね?」
分かってる、と不安そうな顔をする椎菜を軽く抱き寄せてから、麗眞くんは彼と連れ立って教室を出ていった。
「大丈夫だから、そんな不安そうな顔しなさんな、椎菜。
あの男の子、おそらく、というか十中八九、琥珀ちゃんのこと好きなのよ。
だから、両親同士が知り合いってだけで仲よさげに話せる麗眞くんに不信感を抱いてる、ってとこじゃない?」
青春だねぇ、という深月。
「自分たちもでしょ?
なにせ、保健室で秋山くんとキスしてたじゃない」
椎菜、爆弾落としてきたなぁ。
美冬は目を丸くしつつ、信じられない、と言いたそうに何度も瞬きをしている。
「え?いつの間にそんなことになってたの?
もう、早く言ってよね!
とにかく、今日は夏本番みたいな暑さらしいから、日焼け止め必須でバルコニーでお昼ごはんね!」
美冬がそう言ったところで、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
先生が珍しくチャイムと同時に入ってきて、出席を取ったあと、プリントを配布し始めた。
その後に麗眞くんとさっきの男の子が無言で教室に入ってきた。
「全く、お前ら。
カバンはあったから出席にしておいたが間に合うように戻ってこいよ」
先生に何やら言われ、すみませんと律儀に頭を下げた麗眞くん。
「ほら、分かったら早く席につけ。
今、修学旅行の行き先を決めるプリントを配ってるから」
修学旅行!?
そういえば、文化祭は9月で、修学旅行は10月なんだった。
行事が目白押しの2学期、みたいな話を昨日の集会で学年主任が言っていたような気がする。
配られたプリントは、国内と海外でそれぞれ行きたい場所を理由とともに挙げるものだった。
締め切りは終業式の日になっている。
「締め切り厳守だ。
何が何でも出せよー。
皆の回答を集計して、多いところに決めるからな」
皆は修学旅行の話題で盛り上がり、早く教室に行けと先生に注意された。
しぶしぶ文理クラスに別れて教室に移動する生徒たち。
私たちもその仲間だ。
眠そうに教室に入ると、深月や美冬の明るい挨拶が迎えてくれた。
「今日も眠そうだねぇ。
ちょっとクマできてない?
寝不足?」
「もー、拓実くんに心配されるぞ?」
「うん、気をつけたいけど、最近全然連絡取れてなくて」
「え?そうなの?」
「それもそれで心配だけど、仕方ないよねぇ。
拓実くんも医学部目指して勉強中だし?
拓実くんのとこも医学部の進学率、ウチの高校に負けず劣らずいいみたいじゃん?」
そんな話をしていると、バタバタと忙しない足音が聞こえてきた。
「何してるのよ!
モーニングコールしたでしょ!
麗眞ったら。
どういうことよ、もう!」
「仕方ないだろ?
椎菜の声だけじゃ物足りない。
蕩けた可愛い顔見ないと寝た気がしない」
「とかいって、昨日用事があるって言って、私を帰らせたのはどこの誰ですかね?
私がちゃんと麗眞の家に泊まっていたら今頃はとっくに教室着いてたはずじゃない?
結局私が家まで迎えに行ってインターホン鳴らして起こしたんじゃん、もう」
「悪かった。
ちょっと気になることがあってさ」
「こらこら、朝から痴話ゲンカなんて。
らしくないぞー?
お二人さん」
「おはよー深月。
美冬も理名も。
麗眞ったら、昨日は用事があって私をいつもみたいに泊めてあげられないから、今日はちゃんと家で過ごしてほしい。
その代わり、朝の7時にモーニングコールしてほしい。
他でもない、麗眞からのお願いだから、そのとおりにしたのに。
結局起きないの。
まったくもう」
「まぁまぁ。麗眞くんもいろいろあるんだよ。
心配で琥珀ちゃんの情報でも集めてたんじゃない?」
「確かにそうかも。
昨日のあの感じ。
琥珀ちゃん本人は気にしてなかったけど、
あれだけ駅のホームで大立ち回りしたらさ、少なからず話題にはなるし。
今の時代だからSNSとかにもあげられるはず。
痴漢してる仲間とかに琥珀ちゃんの情報渡ったら、さすがに危なくない?」
「腕力じゃ敵わないって分かって、金属バットとかスタンガンとか持ってくるかも。
そういう報復とかも気をつけろよって意味の、麗眞くんのあの言葉だったんだろうし」
皆があれこれと憶測を述べていると、不安げに私たちの集団を凝視している男の子と目が合った。
その視線に、聡い深月は気付いたようだ。
「えっと、私たち、別に琥珀ちゃんの悪口を言ってたわけじゃないのよ?
だから、誤解しないでね?」
「それは知ってるよ。
俺は、そこにいる公認カップルの片割れの男が気になるんだよ。
昨日、午後の授業の合間に琥珀と2人で何やら話してたし」
その言葉で、深月は何かを勘付いたようだ。
同じく、麗眞くんの顔にも同じように納得の色が浮かんだ。
「お前らは授業の準備とかしてな。
俺は、あの子と話してくるわ」
「麗眞、気をつけてね?」
分かってる、と不安そうな顔をする椎菜を軽く抱き寄せてから、麗眞くんは彼と連れ立って教室を出ていった。
「大丈夫だから、そんな不安そうな顔しなさんな、椎菜。
あの男の子、おそらく、というか十中八九、琥珀ちゃんのこと好きなのよ。
だから、両親同士が知り合いってだけで仲よさげに話せる麗眞くんに不信感を抱いてる、ってとこじゃない?」
青春だねぇ、という深月。
「自分たちもでしょ?
なにせ、保健室で秋山くんとキスしてたじゃない」
椎菜、爆弾落としてきたなぁ。
美冬は目を丸くしつつ、信じられない、と言いたそうに何度も瞬きをしている。
「え?いつの間にそんなことになってたの?
もう、早く言ってよね!
とにかく、今日は夏本番みたいな暑さらしいから、日焼け止め必須でバルコニーでお昼ごはんね!」
美冬がそう言ったところで、ホームルーム開始のチャイムが鳴る。
先生が珍しくチャイムと同時に入ってきて、出席を取ったあと、プリントを配布し始めた。
その後に麗眞くんとさっきの男の子が無言で教室に入ってきた。
「全く、お前ら。
カバンはあったから出席にしておいたが間に合うように戻ってこいよ」
先生に何やら言われ、すみませんと律儀に頭を下げた麗眞くん。
「ほら、分かったら早く席につけ。
今、修学旅行の行き先を決めるプリントを配ってるから」
修学旅行!?
そういえば、文化祭は9月で、修学旅行は10月なんだった。
行事が目白押しの2学期、みたいな話を昨日の集会で学年主任が言っていたような気がする。
配られたプリントは、国内と海外でそれぞれ行きたい場所を理由とともに挙げるものだった。
締め切りは終業式の日になっている。
「締め切り厳守だ。
何が何でも出せよー。
皆の回答を集計して、多いところに決めるからな」
皆は修学旅行の話題で盛り上がり、早く教室に行けと先生に注意された。
しぶしぶ文理クラスに別れて教室に移動する生徒たち。
私たちもその仲間だ。