「雅人か?大変だ!母さんが交通事故にあったらしい!」

受話器ごしに聞こえる明らかに慌てた声。

父の話によると、幸いに命に関わるものでは無いらしいが、検査が必要な為、近くの大学病院に運ばれたらしい。

帰り道にあるその病院を目指して、俺は更に歩く速度を上げた。

いつもは、横を通るだけの鬱蒼とした広葉樹林。

その森に覆い隠されるように、高倉大学付属病院は存在していた。