「ただいまー。」


家族にこのことも知られたら嫌だから、普通を装った。


「あ、りぃー。」


ママは元気が無さそうにこっちを見て言った。


「りぃ。大事な話があるの。」


「え、なに、ママ。」


「ママとパパを恨まないで。しょうがないことだから。」


え、なに。


「早く言って、何?」


「あのね...引越し...しなきゃいけないの。」


引越し...?


嘘でしょ?


「な、なんで!?」


「パパの転勤。東京に。」


今、私は千葉の房総らへんに住んでいる。


東京には近いけど、結構な田舎だ。


最近、パパが東京によく行ってるな、とは思ってたけど、引越しまでしなきゃいけないんだ。


「なんでいきなり...。」


「ごめんね。突然決まったの。単身赴任っていう手もあるんだけど、もうこれからずっと東京で仕事なの。だから。りぃは嫌?」


「考えてみる。」


自分の部屋に入って、鍵をかけた。


奏汰のことで、引越ししたいと思う所と、美之里のことで、引越したくないって思う所もある。