淘汰からは、ほのかに桃の香りがした。 そのとき、私は我にかえった。 淘汰の胸板を押した。 淘汰は私から体を離す。 「……何してるの?」 「まだ、好きなんだ。梨依のこと。 毎日毎日、梨依のことばかり考えて、 何かするにしても、何も手につかなかった。」 「えっ?」 「彩菜とは、中学の時に知り合ったんだ。 いつも元気でうるさいやつって、思ってた。」