「美優ー?どーした?」



ぼーっと物思いにふけっていると心配した拓真が聞いてきた。



「ううん、なにもないよ」


「そ?ならよか…」



──…カキーン!



「ファイトー!」


「おー!」 



…そこに、野球部の朝練の声が響いた。

うちの野球部は甲子園によく出場する強豪校。

だから、練習量もハンパじゃない。

今も、朝練中のようだ。



ほんとなら、あそこに拓真もいた


…ハズ、なのに…。



チラッと拓真を見ると悲しいような、悔しいような、そんな表情をしていた。

ふいにかける言葉を飲み込んでしまう。



「…早く行かねーと予鈴なるな…」


「…そう、だね…」



まだ、予鈴がなるという時間では無いが拓真にあわせ、歩く速度を早くする。

そうすると自然と教室にも早く着くわけで。

あたしは窓際の一番後ろ、拓真はその隣に座った。