「まぁまぁ、それは置いといて」


「柚鈴から言い出したのに…」


隣でボソボソ何か言ってるけど、聞こえないフリ。


「で、これどうするの?」


あたしが首を傾げながら指を指した方にあるのは文化祭で使う看板。


さっき雑談ばっかしてたから全くと言っていい程進んでない。


まだ、下書きが終わったばかりで看板にはシャーペンで薄く“キューティメイド喫茶♡”と誰の文字かわからないけど、凄い丸文字で書かれてある。


…趣味悪っ!


なんて言葉が出かけたが、ギリギリの所で呑み込んだ。


「あ〜、そうだよね。あたしが下書きしたは良いけど色どうしよっかぁ」


あれ?


隣から“あたしが下書きした”とかいう声が聞こえたけどきっとそれは幻聴。


うん、幻聴に違いない。


心が趣味の悪っ…いや、あんなに個性豊かな文字とネーミングセンスじゃないことをあたしは信じてるから。


「そうそう、色だよ。この看板を出来るだけ目立させるにはどうしたらいいかだよ」


「あ!なら、文字以外を全部蛍光のピンクで塗れば目立つよっ」


…うん、やっぱりあんたが考えたのか。


このネーミング…。