空に手を伸ばし、星を掴もうとするが当然の如く星には届かない。


そこにいるのにそこにない。


側にあるのに手が届かない。


似てる、と思った。


何度呼んでも振り向いてくれない母さんに。


伸ばそうとした手は、母さんを捉えることは出来なくて、手を振り払われる事もなくそのままで、どうしたらいいのか分からなくなった末、自分で下した。


「…っ」


頰に暖かいモノが伝い落ちる。


初めて、だ。


視界が歪んで何も見えない。


手で濡れた頰を触ってみて、ようやく頰を伝うモノが何かと分かった。


“涙”


初めて流した涙。


今更、今更になって胸が締め付けられるように痛くなる。


無表情で何も変わらなくて気持ち悪いと言われ続けた顔が初めて感情を表に出した。


「…こんなとこで何してんだよ」


そして急に声をかけられる。


声で男と判別出来るが、涙のせいではっきりと男の顔は見えない。


「あんたには、関係ない」


そう、関わってきて欲しくなくて冷たく言い放つ。