「寒いな…」


スポーツバックを一つ持ち、外へと出る。


友達なんていないし、人との関わり方が良く分からなかったから頼れる人なんて一切いない。


夜空にポツンと浮かぶ満月と、満天の星の光に照らされて俺は取り敢えず、寝られそうで家からも離れた公園に向かうことにした。


ふわりと白いものがゆっくりと落ちてくる。


通りで寒いわけだ。


空を見上げると雪がはらはらと舞う。


そして、徐々に積もって行く雪は俺の心を表しているようにも見えた。


首に巻き付けたマフラーに顔を埋め、白い息を吐く。


これから自分はどう生きていこうなんて良く考えていなかった。


…今考えるとあれは親孝行だけではなく、“逃げ”だったのかもしれない。


この雪が全て覆い尽くしてしまえばいいのに。


俺の心も、全部、全部、覆い尽くして掘り起こされないくらいに深く深く。


公園に着き、濡れたベンチに座る。


何もするものもなく、ただ空を見上げて輝く星を眺めるだけ。