「あれれ?驚いてる?吃驚してる?…もしかして、自分で倒したかった?だったらごめん邪魔するのが悪い」


「…別に」


男の笑い声と骨がぶつかり合う音がこの場を支配する。


巳波は頬に一発、男は頬と鳩尾、足と三発ダメージを受けていた。


「ゴホッゴホッ…やばっ無理かも」


男は口から血をペッと吐き出す。


「これで…終わり」


巳波は男が大勢を崩した一瞬をつき、回し蹴りを腹に食らわせた。


「グッ…」


呻き声を上げ、男は情けなく床に倒れる。


荒く、息をしているが起き上がる気力はもう無いようだった。


巳波は男を冷たく一瞥してからあたしの元へと歩み寄ってくる。


「…柚鈴」


喧嘩をしていた先程の表情とは打って変わり、いつもと同じ何を考えているのかよくわからないような、何も考えていないような、そんな表情に戻った。


いつもの巳波に戻り、安堵の溜息をつき、巳波の元に駆け寄ろうとしたが、またガンガンと頭が割れるような痛みに襲われる。


あ、やばい…かも。


そう思った矢先、あたしの意識は再び飛んでいった。