それからは他愛もない話をしながらもう暗くなった夜道を二人で歩いた。


今までで一番最低だった男の話


身に覚えが無いのに、やたら絡んでくる女豹の話。


真っ暗な8時過ぎ、あたし達の声は楽しそうに響いていた。



「じゃあ、また明日ね!今日は楽しかったぁ。ありがとう」


「うん、ばいばい。心のお陰で元気出た」


いつも2人で帰る時に別れる公園でいつもの様に大きく手を振り、またねと言う。


いつも通りだった。


「今日は気分がいいから巳波にもデザート買ってあげようかな」


なんて久しぶりに少し気分がよく、鼻歌を歌っていた。


だけど…


「…みぃつけた」


誰かが、そう気持ち悪いくらいの低い声でいきなりあたしの耳元で囁いた。


ゾワゾワッ


全身から鳥肌が立ち、何故か声が出ない。


咄嗟に逃げようと試みるが、簡単に追いつかれ、腕を思い切り握られてしまう。


「逃がさねぇよ。…柚鈴ちゃん」


ニタリ、暗闇の中で最後に見えたのは不気味に笑う男。


それからすぐに、頭に強い衝撃を受け、あたしは意識を手放した。