きーさんは誠実そうな優しそうな顔立ちをしている22歳。


彼女とも最近別れたらしく、今はフリー。


だから、心が頑張れば付き合えるかも知れない。


店長に席を案内してもらった後、心は何度も「どうしよっどうしよう!」と興奮気味に言ってくる。


「きーさんに一目惚れしたんでしょ?だったらアタックとかしてみればいいじゃん」


「うー、そんな簡単に言わないでよ…。柚鈴はまだ恋したことないからわかんないんだろうけど、好きな人にアタックするのは勇気がいるんだよ!?…しかも初対面だもん」


テーブルに置かれた水を一気飲みし、喉を潤す心。


それは…わかんないけど。


そんなに恋愛って面倒くさいんだ。


ならあたしは恋愛なんてしたくない。


落ち込む心をみてあたしは何も声をかけられない。


今までちゃんとした恋愛をしてこなかったあたしには心の気持ちがイマイチわからないんだ。


水が入ったグラスの周りにできた水滴が下に下に流れていく。


「…あたしもここでバイトしようかな」


一歩、心は踏み出した。


きーさんに近づくために。


「いいと思う。ここまだアルバイト募集してるし」


「うんうん、そうだよね!悩んでちゃ何も始まらないよねっ」


これまで落ち込んでいた心が嘘のように笑顔を見せた。