泣くな、泣くな、泣くな。


あたしは麒麟の姫で、強くなきゃいけない。


また、泣いたらウザがられる。


冷たい瞳をあたしに向けた八尋を思い出す度ゾクリと悪寒が走る。


あたしはどうしたらいい?


どうしたらいいの?


みんなと居られるには?


八尋と一緒に居られるには?


八尋にあたしを見てもらうには?


八尋とみんなをあたしのモノにするには…?


八尋のことを想う度、出てくる女の子。


邪魔、邪魔、邪魔、邪魔、邪魔。


…邪魔なの。


「ふふ…」


誰もいない廊下にあたしの笑い声だけが響く。


そうだ、そうだ。


あの子を、あの目障りな女を。


「…消しちゃおう」


何でこんな簡単なことを思いつかなかったんだろう。


八尋が帰って来ないのはあの女のせい。


八尋があたしを好きじゃないのはあの女のせい。


心が染まり


グルグル、グルグル回る回る。


黒い感情が渦巻いて、白い心を覆い尽くす。


「八尋…待ってて」


side END