「…なに溜息なんかついてんだ。お前は俺達のモノで、勝手に抜けるとか許さねぇ」
“モノ”?
人をモノ扱いするとか何様なんだ。
「…何様か知らないけど、あの場所居心地が悪いんだ」
そんくらい知ってるだろ。
俺が嫌悪されているってことを。
そんな俺がまだ居るっていうことの方がそっちにとってはマイナスなんじゃないのか。
「そんなこと知っていますよ。ですが、あなたには居て貰わないと困るんです」
「…お願い。戻って来てよっ!居心地が悪いなら、あたしがなんとかするから!」
もはや空気と化していたお姫様は瞳に涙を溜めながら大河の腕の中で喚く。
そんなお姫様の声なんて俺の心に響く筈もなく、ただ、お姫様は自分が言えば何でも人が聞いてくれると思っているんだろうかなんて思っていた。
いるよな。
以前、暇つぶし程度に柚の本棚にあった携帯小説に目を通していた時の主人公がこんな奴だった。
天然、無自覚、無知…。
目の前にいるお姫様は全てにおいて、その主人公と同じ。
吐き気がしてすぐに本を閉じてしまったけど。

