「実玖は麒麟の誇りを汚してしまった。…それは総長として許せないことだ。俺はまだ実玖を好きだという気持ちは変わらないが私情を挟んでこれ以上ここを落としたくはない。…それにこれは実玖の意思でもある」
“上”に立つ者の責任はこいつにもある。
8代目で終わらせなんて先代達に申し訳ないのだろう。
それに、昔の俺のようにここだけにしか居場所がない奴もいる。
「…この決定に異議がある者はいないか」
ざわざわとした“下”の奴等はもう口を開かず、八神に着いて行くとでもいうように力強い目で八神を見上げる者ばかり。
「それでは今後未玖には麒麟の倉庫出入り禁止、姫をやめ、一切こちら側へと近付くことは禁ずる!」
八神の声が倉庫内へ響き渡る。
姫の地位を剥奪され、近付くことも禁止と言われたお姫様はどこか安心したように目に涙を溜めつつもふわりと笑った。
お姫様…いや、滝川は“下”の奴等に連れられ倉庫の出口へと向かう。
その度に滝川に感謝の気持ちを述べる奴もいた。
改めて滝川を見ると俺が思っていた以上に慕われていたのがわかる。
…だが、それも今日で終わり。
俺も滝川の後に続くようにこっそりと麒麟の倉庫を抜け出した。

