家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)



平常心だよ、あたし!


一歩一歩ゆっくりに、でも確実に足を動かす。


「〜うあぁぁ…」


「ぎゃあぁっ!?」


キモいキモい気持ち悪いぃぃ!


地の底から出したような声であたしに向かって歩いてくるゾンビみたいな奴。


「も、もう!来ないでよっ」


後ろから迫ってくるゾンビみたいな奴を振り切ろうと歩くスピードを早めた、その時…


「…うわっ」


ズデンっ


と盛大な音をたてて、床に頭からスライディングする。


ヒリヒリと痛む額。


「いったぁ…」


あー、こんな怖い思いするのも痛い思いするのも全部巳波のせい。


涙目になり、歪む視界の中ゾンビみたいな奴があたしのそばまで来ているのがわかった。


「……」


何も怖さで言えない。


言えなかったけど、本当は苦手なんだよ幽霊とかそういう類。


人工的なものだとしても怖いのは怖い。


ギュッと目を瞑り、何をされるのか怯えながら待つ。


何、何されるの?


お願いだから他の幽霊の所には連れていかないでよ!?


もうすっかり頭の中からここはお化け屋敷だということは抜けていた。