「では、次の方どうぞ~」
にこやかに暗幕から顔を覗かせる。
あ、次ってあたしだ。
前にはさっきまで居たと思っていたバカップルはもうすでにいない。
あたしは暗幕の内側に入り、ごくりと唾を呑み込んだ。
大丈夫、大丈夫。
もしかしたら、運が良ければ巳波がいるかもしれないじゃん。
こんな所で怖気付いてる場合じゃないんだ。
一つのテレビの前に無数の椅子。
その中の一つの椅子に座り、まだ暗い画面のテレビを見る。
すると流れてくる不気味なBGМと映像。
うわっ、凄い凝ってて気持ち悪い。
貞子みたいに長い黒髪で顔を隠すように垂らしている女。
‘では、無事なご帰還を祈っております。’
再びテレビ画面が暗くなる。
どうやらもう歩き出さなきゃいけないみたい。
「…ひゃっ!?」
首筋に冷たい風が当たる。
あ~、変な声出ちゃったじゃん。
これは誰かが霧吹きとか何かで当てただけだから、幽霊じゃない、幽霊なんかじゃないから!

