溢れたバニラエッセンスを布巾で拭いてはみたものの、香りは充満したままで。
甘い甘い香りに包まれながら、キミと二人でマッシュポテトを丸め、形を整える。
「指先が器用なんだね?すごーい!
私はそこまで綺麗に丸められないや。」
そんな風に吃りもせず、すらすらと言ったキミは、きっと緊張が解けたんだろう。
全て、僕の思惑通り。
キミは多分、知らない。
バニラの香りはリラックス効果があるって事も、僕がわざとキミに近付いて驚かせた事も、キミが倒すだろう位置に瓶を置いた事も。
形の整ったスイートポテトに、照り用の卵黄を塗り始めたキミ。
僕は、ボールに残ったマッシュポテトをスプーンでかき集めると、それを小さく丸めてキミの口元に持っていった。
「あ!そっか!味見もしないとね?
…残したら、もったいないし。
えっと…じゃあ、頂きます…。」
照れながらも、小さな口をあーんと開いたキミは、…なんて無防備なんだろう。
流石は、リラックス効果様様だと思った。
ゆっくりと、キミの口の中にそれを入れる。
キミが恥ずかしがって顔を背けるだろうと予想していた僕は、キミの口の端に指先を滑らせた。
予想通りの反応。
予定通りの場所への添付。
さっきと同じ様にして、キミの口の端に付いたマッシュポテトを指で拭おうと思っていたのに。
僕自身が…まさか…
…予定外の行動をとってしまうだなんて。
キミの顔に顔を近付けた僕は、
口の端に付いたそれを、舌先で舐め取った。

