-- ピピピピッ!ピピピピッ!ピッ…


キミがセットしたキッチンタイマーが、
【時間だよ!火、消さないとヤバイよ!】
と言わんばかりに鳴り響いた。


「や、…やっと時間になったね。」


緊張を露にしていたキミは、そう言いながらソファから立ち上がる。
キミと二人でキッチンに向かい、蒸し器の蓋を開けると勢いよく立ち上る白い湯気。


「お、…お姉ちゃんの美顔機のスチームみたぁ~い。わ、私の肌も潤ったかなぁ~?
…なんて、あはははは…。」


普段ギャグを言わないキミが、そんな風にしてこの空気感を取り繕うとしているのを見ると、何だか笑いが溢れてしまいそうだ。


一生懸命なキミが、可愛い過ぎて。


二人きりで過ごす時間は久しぶりだった。
照れ屋なキミが、僕達と同じ頃に付き合いだした友人達と一緒に居たがったからだ。

今日にしたって、皆でスイートポテトを作ろうっていう話になっていた。
唯一、一人暮らしをしていた僕の部屋が、いつもの溜まり場になっていて。


でも今は、キミと僕の二人きり…


「と、突然遅れるだなんて、二人共どうしたのかな?二人が来る前にスイートポテト…出来上がっちゃうかもしれない…じゃんね?」


キミのその言葉に曖昧な返事を返した僕は、
心の中で『意地悪して、ごめんね?』と呟いた。


あの二人が遅く来る事になったのは、今日の朝一番に、僕が友達にメールしたからなんだ。



『たまには遅く来いよなっ!』…って。



だから、今は、二人きりで居られるんだよ?