そして、さっきの先輩以上に近くまできて
あたしは反射的に目をつぶった。
.....あ、れ
けど何も感じなくてゆっくりと目を開けると
彼の綺麗な顔がまだ目の前にあって
心臓が壊れてしまうほどドキドキしているのに
目を閉じているのをいいことにじっと見つめてしまう。
「なんだよ本気かよ、つまんねーの」
すると後ろからそんな先輩の声が聞こえると
先輩は気づけばいなくなり
彼はゆっくりと目を開けた。
「...えっと、あの...」
思わず重なった視線にまた胸が高鳴る。
「大丈夫?」
密着した身体を離し、
掴まれてよれていたブレザーの襟を整えると
彼は困ったようにあたしを見下ろした。
「あっはい...あの、今のって...」
「あぁキスしたら信じてくれるかなって思ってたけど、あいつバカだからフリで消えた」
「それって...」
じゃあ本当はあたしにキスしようとしていたわけ?
...なんなの、その余裕な感じ。
「どーせキスしたことないんだろ?」
「....はぁ?」
勝ち誇ったように笑う彼に
今までのドキドキが一気冷めた。
....なんなのこいつ!
あたしを誰だと思っているの!!

