死体を見下ろしていると、ケータイから電子音が流れた。電源切るの忘れてたなんて思いながら、電話に出る。

『もしもーし、仕事終わったー?』

 電話から呑気そうな少年の声が聞こえた。

「うん、今終わったとこ」

『そっかー。じゃあ、グッドタイミングだったみたいだねー』

「そうだね」

 素っ気なく答えると、少年─紫暮は不服そうな声を出した。

『何だよー。何かテンション低くない?』

「人を殺した後だぞ」

『んー……、だから?』

 純粋にそう思っているのだろう。その声からは、皮肉も何も感じなかった。

「……いや、いいよ。何でもない」

『あっそ。まあとりあえず、死体の始末はちゃんとしといてね。死体が見つかっちゃったら、いろいろ面倒くさいからね』

「分かってるよ。そんな事言うために、わざわざ電話してきたの?」

『うん、暇だったからねー。んじゃまた』

 電話を切り、溜め息を吐く。無駄な時間を過ごしてしまった。早く終わらせないと。

 死体の傍に膝をついて、腕を手に取る。そしてさっきよりも一回り大きめのナイフで、切断していく。

「かった……」

 筋肉は切れても、骨は全く切断できないからいつも苦労する。