記憶と。

 2学期も体育祭が終わり、文化祭が終わり、そして、なぜか遠足の季節となった。
僕の中学では11月に遠足があった。理由は涼しくなったほうが歩きやすいからということだった。
たしかにそれはそれでいいのだが、距離が半端ではなかった。
それに僕の田舎は海も山もあり、11月の海や山は結構寒かった。
 そして遠足の日が近づいてきた。
現代の遠足というのは、現地までバスでいって、楽しくお弁当を食べて、おかしを食べて、帰る学校が多いようだが、
田舎ではもちろん全てが歩きだった。
僕は部活をさぼって、遠足のコースを健二と軽く自転車で走ってみることにした。
そして、少しだけ楽しみだった遠足は、若干の絶望に変わった。
そのコースは、自転車で1時間走っただけでは半分も進むことができなかった。
そしてそこからは更に山をひたすら登っていくコースだった。
「俺ら・・・こんなところいくの?」
健二が本気で疲れ果てた声でいった。
「そうみたいね・・・」
僕も信じられないコースにやる気がまったくなくなっていた。
そして、僕たちはのんびり家へ帰った。
 健二と別れ、僕は自販機でジュースを買っていた。
そして帰ろうと自転車に乗ってペダルを踏み込んだ瞬間、後ろにいきなり過重がかかった。
僕は驚いて後ろを振り向いた。
「ユーキ。なにしてんの?」
振り向くと荷台には綾子が乗っていた。
「びっくりした?」
「びっくりするよ・・・。」
「で、なにしてるの?」
「お前こそ、なにしてんだよ」
「私は部活帰りに決まってんじゃん。部室にいってもユキいないしさ。」
「ああ、ごめん。」
「で、なにしてたの?」
「健二と遠足のコース見に行ってたんだよ。うちのガッコ、遠足辛いって言ってたからさ。」
「ふーん。で、なんで私誘ってくれないの?」
明らかに不機嫌そうな口調だった。