遠くなる葵の背中を見送り、逆に近づいてくる雪乃に目をやる。 「あー、葵ちゃん、ほんと面白ーい」 その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。 『笑いすぎだろ』 「だーって‥」 ふと空を仰げば 真っ黒な雨雲がちらほら浮かんでいる事に気が付いた。 『帰るか、俺らも』 「ん」 雨が降る前に。 『……』 「……」 疲れたのか、帰りは黙ったまま大人しく俺につかまっていた。 『寝るなよ?』 「当然っ」 時々そんな会話をしただけ。 最後に「今日はありがと」と言って、雪乃は帰って行った。