「ちょっと~、拓也っ!

何で起こしてくれなかったのっ!?」




クローゼットの扉を開けて制服のブラウスを取り出す。




いつもこの時間はリビングでコーヒーを飲んでいる夫。


慌ただしく寝室で身支度をしながら、私は応答のない彼に再び声を掛けた。




「……ちょっとぉ、聞いてる!?」




ブラウスのボタンを留めながら、静かに夫のいるリビングを覗き込む。


しかしそれでも返事はなく、リビングからは毎朝観ているニュース番組の音声だけが聞こえていた。