「…俺んちに連れて帰る」

「なに言ってるのよ、そんなことさせられるわけないでしょ」

「でも、あいつ家には帰りたくねぇっていうし」




少しだけ覚醒した頭の隅に、そんな会話を聞く。
誰が話してるんだろう…。
ボーっとして、わからない。





「それでも、あんたは男で、彼女は女の子なの。わかる?」

「わかってる。なにもしねぇよ」

「はぁ。私が信用しても、他の先生はどうかしら。あなたは不良で、彼女は学年一の秀才なの」

「…じゃあ、どうしろっていうんだよ」





この声、葵くんの声…?
でも、なんて言ってるのか聞き取れない。
なんの話をしてるの?





「…わかった。私の家に連れて行くって他の先生には説明する。本当は、実際にそうしてあげたいけど…」

「わかってる。繭子に迷惑はかけねぇよ」





ああ、もう、なにを話しているの?




「じゃあ、車を回してくるから」

「ああ」