「…葵くんって、わからない」
「は?」
「私をからかって、楽しい?」
私なんかからかったところで、なんのメリットもないと思うけど。
そう言うと葵くんは、じっとわたしを見つめる。
その瞳に、ドキドキと胸が鳴る。
「…からかってねぇよ」
「どこが!今のだって、今日会った時のことだって…」
「からかったつもりなんて、ねぇって言ってんの」
どこか真剣な瞳に、勘違いしそうになる。
こういう時、慣れていないって不利だと思うんだ。
簡単に、勘違いしてしまいそうになる。
相手は、学校一有名な女たらしの不良くん。
そんな相手に勘違いなんて、どうかしてる。
「…葵くんに、そんな風に言われたら、きっと女の子はイチコロだろうね」
イチコロって、なんだ私。
いつの時代だ…。
それに、そんな風にってどんなふうになの。