そして、出来上がった鍋をみんなでつつく。
なんだか、不思議な光景だ。
鍋なんて、家族以外としたことなんてなかった。
家族とも、あまりしたことがないのに。
鍋って、仲のいい家族の象徴みたいな感じがする。
同じ鍋をつつきあって、食卓を同じ時間に囲む。
「おいしい」
「ね、でしょでしょ!梨奈特製のキムチ鍋!」
「鍋なんか、誰が作っても一緒だろ」
「そーんなことないわよ!ね、ちょこちゃん!」
「は、はい…」
こうして、誰かと囲う食卓は、ちょっとこそばゆくて。
見れば、竹内さんも池田くんも、藤堂くんも笑ってる。
この中にいる自分が、やっぱりどこか不釣り合いで。
少しだけ、壁を感じる。
長年の付き合いの三人と、私なんて、壁があって当然なのに。
「ね、ちょこちゃんってさ。好きな人とかいるの?」
「…えっ」
食べ終わり、少しまったりしていたころ、竹内さんが切り出した。
女の子は、恋愛トークが好き。
竹内さんも、もれなくみたいだ。


