雨の勢いはとどまることはなく。
大粒の雨が傘を叩く。
「…ひよこ?」
「はい?」
「あんたの名前」
「…千世子です!」
ちょっと、この人、人の名前をとんでもない間違いを…。
覚えていないのは仕方ないにしても、どう思い違いをしたらひよこになるの?
「ああ、千世子か」
「…別に、覚えていただかなくて結構です」
「悪かったって。もう覚えたから」
名前を憶え間違えていたからそう言ったのだと勘違いしているらしい藤堂くん。
私が言った意味は、これから先藤堂くんと関わることはきっともうないはずだからという意味なんだけど。
前もそう思って、なぜかこうしてまた関わってしまっているのだけどね。
でも、これで終わり。
「千世子のそのしゃべり方って、クセ?」
「はい?」
あの、いきなり呼び捨て?
恐るべし!


