少し離れて歩く。
会話は、ない。


ああ、声をかけるんじゃなかったと今更後悔する。
それでも、藤堂くんの家まではすぐだ。
それまでの辛抱。





「なあ」

「は、はいっ」

「…あんま離れると濡れるぞ」

「だ、大丈夫です」





私はきっぱりと断言する。
あまりに不自然すぎるその回答に、自己嫌悪。
藤堂くん相手だと、うまく話せないの。





「ったく」




藤堂くんはそう小さく呟くと傘を逆の手に持ち替え、私側の左手を伸ばし私の肩を抱きかかえるようにして寄せる。
倒れこむようにして藤堂くんにもたれかかってしまった私は、一気に顔が熱くなった。




「ちょ、…」

「あんたに風邪ひかれると、俺のせいみたいで気分悪い」

「あ…」




さっき、私が思っていたことと同じこと。
そ、そうだよね。
うん、それもそうだ。




「ごめんなさい」




私は、素直に謝った。