｢ふぅん…。じゃあ、遠慮なく」
｢え、あ、はい｣
藤堂くんはそう言うと私から傘を奪う。
私が戸惑っていると、そんな私を振り向いて見た。
｢なにしてんの、早くいくぞ｣
｢え…あ、あの…。はい…｣
私の傘に入れてあげるという、言ってみれば私が主導権を握っているはずなのに。
いつの間にか、藤堂くんのペースになっている。
慌てて藤堂くんが持つ私の傘の中に入った。
な、なんだか…。
勢いでこんなことになってしまったけれど、これって相合傘という奴ではないの？
恋愛小説には、よくあるパターンだわ。
そんなことに気づいてしまって、私の足は止まる。
｢おい｣
それに気づいた藤堂くんは、めんどくさそうに呼ぶ。
今更だ。
それこそ、覚悟を決めないといけないのだと思った。
