二人は、結局休み時間が終わるまで10分間ずっと騒ぎ通して帰っていった。
葵くんは、呆れ顔で見送りながらも、少し口元に笑みが浮かんでいたのを私は見逃さなかった。
「葵くん、授業、頑張ってね!」
「…ああ」
なんだか、そんな応援もおかしいけれど。
私は葵くんに笑いかけると自分の席に座った。
私と葵くんの噂は瞬く間に学年全体に広がってると、こっそり梨奈ちゃんが教えてくれた。
釘さしとこうか?と親切に言ってくれたけど、私は断った。
私と葵くんが付き合ってる。
それは、事実だから。
それにあることないこと付け足されていったとしても。
私たちが、真実を知ってたら問題ない。
誰になんと言われようと、関係ないから。
わかってくれる人がわかってくれればいい。
きっと、前の私なら、そんな風には思えなかった。
そもそも、そんな噂を立てられるようなこともなかっただろうけど。
私も、噂に振り回されてた人だから。
だから噂に過剰に反応していたと思う。
でも今は、噂は噂なんだとわかる。
噂がすべてじゃない。
自分が、ちゃんと関わってみて初めて、真実がわかるんだと。
だから、噂には振り回されないと決めた。


