「…大事なもの、落としちゃって」

「大事なもの?」

「うん…。でも、見つからなくて、誰かに捨てられちゃったのかも…」

「そんな捨てられるようなものなの?」




一ノ瀬くんに聞かれ、私は小さく頷いた。




「私にとっては、大事なものだけど…。人から見たら、ただの紙切れだから…」

「へぇ。なに、思い出かなんかあるわけ?」

「…うん。私にとっては、かけがえのない、大事な思い出なの」





そう、私にとっては。
私の一方的な思いだけどね。




「…へぇ、じゃあ、でもそれって、忘れろって神様が言ってるのかもしれないよ」

「え?」

「忘れて、新しい恋に行きなさいってね」

「一ノ瀬くん…」

「思い出って、そういう事でしょう?」




新しい恋に…か…。
きっと、葵くんもそれを望んでる。
でも…私は…。