「早瀬さん!」
なぜか、私は一ノ瀬君に気に入られてしまったみたい。
ことあるごとに私のところに来てはニコニコ爽やかな笑顔を向ける。
「どうしたの、一ノ瀬君…」
「ここの食堂、おいしいね。俺、感動したよ!」
「そうなのかな…。私、ここしか知らないから…」
すごく嬉しそうな一ノ瀬君。
そんなにおいしかったのかな?
確かにおいしい方だとは思うけど。
「俺の前の高校なんて、ほんと酷いもんだったよ。メニューも数えるほどだったしね」
「確かに、メニューは多いかも」
「だろ?昼が楽しみになるな」
とても大げさだとは思うけど、それ程感動したらしい。
葵くんに対してあんなに冷たいことを言っていた人とは思えないくらい明るく気さくな人だ。
だから、すっかりクラスにもなじんで、友だちもできたみたい。
女の子はいまだにキャーキャー言っていて、それを一ノ瀬君は疎ましく思っているようだけど。
「ちょっと、千世子」
「え?なに?友恵」
「なにじゃないわよ。なに一ノ瀬君といちゃついてるわけ?」
「えっ、いちゃついてなんかいないよ」
なにを言い出すかと思えば、いちゃつくなんて。
どこが!


