「早瀬さんがせっかく勇気を出して声をかけてあげてたのに」
「いや…」
「だって、誰も、好き好んであんな頭の悪そうな金髪に声かけようとか思わないでしょ?関わりたくないし」
一ノ瀬君は、全く悪びれた様子もなくそう言い切った。
確かに、葵くんは不良で素行もあまりよくないし、髪だって金髪だけど。
葵くんの外見をちらりと見ただけの一ノ瀬君にそんな風に言われるのは納得できない。
「あ、ごめん。怒った?」
「…あまり、人を見た目で判断してはいけないと思います」
「そうかな?」
爽やかな笑顔の裏で、そんなことを考えているんだ。
私は、それ以上なにも言わずただ教室に向かって歩いた。
いろんな人がいて、いろんな人の見方がある。
それは、仕方ないこと。
私だって、優等生で、真面目で暗いと思われてることは知ってる。
自分でもそう思うし。
それに、私も不良の人たちに偏見を持っていたのは確かだから。


