「席は、早瀬の隣な。早瀬、手をあげてやれ」

「…はい」




窓際の一番後ろの席で、一人飛び出ていたはずの私の隣には、今日来たら机が用意されていた。
それが、そういうことだったのか、と今確信する。




「よろしくね、早瀬さん」

「よろしくお願いします」




人当たりのよさそうなさわやかな笑顔で挨拶をされ、私は生まれ持った人見知り全開の笑顔で答えた。
葵くんとは正反対の、人懐っこさを感じる。




「俺、まだ教科書持ってないんだ。見せてくれる?」

「あ、はい…」

「ありがとう」



キラキラと、効果音でもついてしまうんじゃないかというくらいさわやかな彼。
少し…、私には眩しすぎるようです。


例えば、こんな人を好きになれば、こんな思いをすることはなかったんだろうな。
誠実そうで、一途そうで…。




…って、なにを考えているんだろう。
それでも、葵くんを好きになったのは、私なのに。