12月1日。
あの階段での出来事から三日後。
あれから、葵くんとは話もしていない。

付き合っていると、言えるんだろうか。
そもそも、本当に付き合っていたんだろうか。




友恵は、なにも言ってこない。
梨奈ちゃんと洸くんには最近会ってもいないし、私と葵くんの関係を知っているかもわからない。



もう、このまま何事もなかったようにすべてが終わっていくんだろうか。




私と葵くんの噂は、あっという間に広まったようだけど、学校で会ってもあまり会話もしない私たちにその噂はいつの間にか消えていった。





そして、今日も朝のHRが始まる。
もちろん、葵くんはいない。





「今日は、転校生を紹介する」



担任の先生が、そう言って声を張り上げた。
転校生なんて、珍しい。

しかも、この時期だ。




先生はそう言って一人教室の中に招き入れた。
黒髪で少し眺めの前髪を横に分けた、笑顔の綺麗な好青年。
誠実そうとは、彼の事を刺すんだと言えば頷ける。





「一ノ瀬春です。今日から、よろしくお願いします」



見た目通りの澄んだ声、さわやかそうなその彼に、きっと数人の女子は射抜かれたんじゃないだろうか。
チラリとみれば、目をハートにしているんじゃないかという女の子たちが垣間見れた。