次の日の昼休み。
私は一人で、図書室にこの前の本を返しに向かっていた。
「葵ったら…彼女できたんでしょぉ?」
いつかと同じ階段の踊り場にさしかかる時、同じ声がして立ち止まる。
今回は、気づかれる前に立ち止まることができた。
声が、あの時と同じ。
あの綺麗な女の子だろう。
「ん、だったら、なに?」
「ひどぉい。こんなことしてていいわけ?」
「なに、じゃあ、やめる?」
「やだ。別に、恵美あんな子どうなっても関係ないもぉん」
「どっちがひどいんだよ」
嫌でも聞こえてくる声。
立ち去ればいいのに、足が動かない。
葵くん…。
どうして…。
ううん、葵くんは言った。
気持ちなんてないって。
だからできるんだ。
私の事なんて、本当にどうでもいいんだね。


