「さっきから、仏頂面で楽しくない?」
「えっ?そ、そんなことない!楽しいよ」
そんな私に、とうとう葵くんからそんな言葉が飛ぶ。
私は必死に否定する。
楽しい。
葵くんといられることはとても嬉しい。
たとえ、心がそこになくても。
「これ、おいしいね」
「ん。おすすめ」
葵くんの一押しで決めたカフェ。
おしゃれな雰囲気で、ご飯もとてもおいしい。
こういうところ、きっと男の子だけでは来ない。
誰と来たんだろう…。
私みたいな、本気じゃない女の子?
それとも、本気の子?
誰にも本気にならない。
その言葉が、私へのけん制の意味で言われただけだとしたら。
もしかしたら、本気の女の子は別にいるのかもしれない。
私の頭は、そんな事ばかり考える。
「ついてる」
伸びてきた手が、私の唇の横に触れる。
少し力を込められ、拭われ離れた指先にはソース。
葵くんは、それを自分の口に運びチュッとなめとった。


