決まった映画は、結局、とても甘いラブストーリーもの。
時間的にいいのがこれしかなかったのだ。
途中、とても濃厚なラブシーンのあるそれは、葵くんの隣で見るのはとても居心地のいいものではなかった。
「結構よかったな」
「うん…そうだね」
頷いてみるが、大して内容を覚えてはいない。
心ここに在らずとは、こういうことか。
ダメだ、落ち着かない。
一人からまわって情けない。
こんな私が、葵くんの隣にいていいんだろうか。
好きじゃなくても付き合えるとしても、その相手が私で、葵くんはいいんだろうか。
「なんか、食う?」
「うん」
思い返せば、デートを始めて、うんとか、そうだね、とかそういう肯定の言葉しか口にしていない気さえする。
会話が、全く面白くない。


