「できた!」
先生は、慣れた手つきで薬と包帯を巻き終えると、その出来に満足したようにうなずき笑う。
藤堂くんから受け取った氷をその手に乗せ私の右手にそれを握らせる。
「私、これから研修ででなくちゃいけないの。早瀬さん、もう少し休んでいきなさい。服もそんなだし、ここで着替えてもいいから」
「あ…」
そうだった。
頭からざるそばをかぶり、汁も思い切りかぶったのだった。
走る最中ソバはすっかり体から落ちているようだけど。
「だからって、変なことすんじゃないわよ!」
「は、しねぇよ。誰が」
その誰が、の後にはきっと。
誰がこんな地味で暗い女!と続くのだろう。
そんな自虐的なことを思いながらそのやり取りを聞く。
「女の子に火傷を負わせるなんて、本当に最低だからね」
「わかってるよ。うるせぇな。さっさと行け」
「怖がらせるんじゃないわよ」
「しつこい、さっさと行けって」
「はいはい」
先生はそういうと満足したのか鞄を取り本当に保健室から出ていってしまった。
ちょっと、ちょっと待って―!!!
保健室に、二人きり。
“誰がこんな奴と”だとしても、正直勘弁してもらいたい。


