「どこ、行く?」
「…どこ…って」
言われても…。
突然デートだと言われても、行く場所なんてわからない。
「…映画、とか…?」
「ぷっ、定番」
ぽつりと言った場所は笑われた。
そうだよね、葵くんはデートで映画とか行き飽きてるよね。
「いいよ、行こうか。映画」
「…うん」
自然と手を繋がれ、歩き出す。
慣れているな、と思った。
葵くんの少し後ろから見上げる横顔と、私の手を引く掌。
それを交互に見ながら、私は今の状況を整理していた。
「なにみたい?」
「え…と…」
「千世子は、なんでも行けるたち?」
「え…」
いつも、ひよこ、とかお前、とかあんたとか呼ばれていたのに。
急に呼び方が千世子に変わった。
それは、付き合い始めたから、なんだろうか。
「昨日重なってた本の中にホラーものがあった」
「あ…、うん。嫌いじゃない」
よく、見ているんだ。
特に話題になんかしていなかったはず。


