「…俺と、付き合ってみる?」

「え……?」




サラリと言われたその言葉、気づかずに流してしまいそうになる。
私はまっすぐ葵くんを見た。
葵くんは、気怠そうな感じはそのままに、私をまっすぐ見つめ返した。




ドキリ。
胸が、鳴る。






「俺と、付き合ってみるか?」

「え…それ…って…」

「あんたの、告白の返事」

「あ……」




もっていた本が、手からすり落ち音を立てる。



「でも、俺は、誰にも本気になんねぇから」

「え?」

「あんたの事も、本気じゃない」

「…」

「それでも良ければ、俺と付き合え」





それは、私が読んでいた幸せそうな二人とはとてもかけ離れていて。
同じように、温かい気持ちになるには、とても冷え切っていて。


それでも、


「うん…」



頷いてしまった私は、どうかしていたんだと思う…。