「しかたねぇだろ。病人を歩かせるわけにいかねぇし」
「…ありがとう」
「とりあえず、連絡はしとけよ」
「うん…」
怒られるのは、覚悟だ。
それでも、今日は、帰りたくない。
帰って、お母さんの愚痴を聞きたくないの。
お母さんには、風邪をひいてしまって、倒れてしまって、学校の近くの子が泊めてくれるから、と正直に話した。
それが男の子だとか、そう言うことは黙って話すと、お母さんはやっぱりぐちぐち言っていたけど、学校が近いなら明日もそこからいけるわね、と当然のように言われた。
「どうだった?」
「うん。学校に近いなら、明日もそこからいけるからいいって」
「…は?」
「言ったでしょ。心配なんてするわけないって」
慣れてしまっている私は、動じない。
そんなこと、今に始まったことじゃない。
「ふぅん」
「うん」
「じゃ、とりあえず寝ろ。ぶり返すぞ」
「うん…。でも、葵くんはどこで寝るの…?」
私がベッドを占領してしまったら、寝るところがない。


