葵くんの手が、私の頭に乗せられた。
「お前も、いろいろあんだな」
「あ…、でも、これが普通だと思ってたから…」
「そうか」
でも、葵くんと出会って、葵くんの生き方を見て、普通ってなんだろうって思うようになったの。
私が思っている普通は、葵くんにとっては普通じゃなくて。
葵くんにとっての普通は、私にとっては信じられなくて。
だったら、普通ってなんなんだろう。
「私も…、ちゃんと自分の足で歩きたい」
「ひよこも、一人立ちか」
「ちょ…、ひよこじゃないって」
私が抗議すると、葵くんはケラケラと笑った。
それにつられて、私も笑う。
「…親に、連絡しとくか?そういや」
「あ……」
「迎えに来てもらえねぇなら、こっから電車きついだろうし、泊まってけば?」
「え、い、いいの…?」
泊まるって、葵くん、あまり人を部屋に呼ぶの好きじゃないんだよね?
それなのに、いいの?


